青森県八戸市の一級建築事務所 建築組 パックス有限会社

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大工の技術

大黒や梁の加工は今日も続く。作業場では曲がり同士の交差する刻みが進行中だ。レベルの位置から曲がり具合の寸法を出したり相当難しい。職人たちは自分のイメージで高さや深さを決める。設計者としてのこちらのイメージと食い違うこともままある。 
 
こんな時は無理な押し付けでなく妥協点を見つけたり別な方法を模索する。経験を経ると大工の考えていることがわかってくる。大工には知識と技術という点でプライドがある。 
 
完成イメージよりも工事しやすさに重点をくのは止むをえない。実際に工事するのは彼らだしトラブルも自分たちに来る。技術は時として工事のしやすさが進化の素になる場合がある。必ずしも出来上がりイメージ優先ではない。 
 
逆に彼らの持つ知識や技術にはこちらの意図を超えるものがある。時に間違って作ったものが意図するよりも素晴らしいこともある。それがわかると大工たちの意見は設計者の技術向上のために大きな要素を持つ。 
 
古民家を見ると現代の建築技術が忘れているものがある。基準法では認められないことでも長年の経験で有効な方法である場合もある。それを認めるか否かは設計者の判断だろう。 
 
作業場で大工たちと打ち合わせを重ねるとお互いの意図がわかって来る。こちらのつまらない意図が技術的に難しいことはよくある。逆に大工が端折ったことが大きなイメージダウンにつながる例もあった。大事なことは現場でよくコミュニケーションをとることだろう。 
 
何度も大工の技術に期待を超えた仕事を見てきた。持っている技術を遺憾なく発揮できるようなやり方は取っている。設計者半分大工半分くらいになるととても面白い家つくりになる。なんとかそういう環境を作りたいと思っている。
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栗の大黒

午前中は作業場でお施主様も立ち会って材料の選定。何でも自分で確認しないと気が済まない方なのです。大工は大黒柱の加工で腐りかかったところはボンドで補修です。樹齢は100年を超えているのをお施主様が確認しました。 
 
栗とかカラマツは5,60年を超えると自分で中心から腐ってくるのがあります。樹齢100年の栗は珍しい方です。広葉樹は一般的に横に広がる傾向があるので枝の部分から腐って倒れたりします。意外と長齢樹は少ないものです。 
 
大黒柱として使われる木は欅、栓など多くて栗は少数派です。理由としては長樹齢の木が少ないのとまっすぐなのがないからです。だからこの栗を見た時にすぐ購入を決めました。製材してさらに目の細やかさを確認できました。 
 
ただ残念なことに枝からの腐れが何箇所あって気にする方には向いていません。結局10年もの歳月が経ってやっと陽の目を見たわけです。木の好きな方で迫力のある古民家を希望する方に使ってもらおうと思っていたのです。 
 
今回はただ太いだけでなく変わった目や樹齢を気にってもらって決まったわけです。節や割れがないだけなら他にあったのですが栗の迫力と私の熱心な押しが決め手だったようです。この栗があって欅の曲がりがバランスよく収まる気がします。
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職人不足

浄化槽設置の現場へ寄って土留めのの現場へ。昼頃から雨が降り一時中断後土留め工事再開。作業場では大黒や梁の刻み。木の大好きなお施主様が大黒は梁の加工の様子を写真に残したいと。一生の記念とかで張り切ってパチパチやっていた。 
 
先月は雨が多く基礎屋は大変だったらしいが今月は晴れが続く。今日も降るのは降ったのだがすぐ止んだ。外の仕事は工期が読みづらい。生コンの流し込みの時に降ったりタイミングよく晴れるとは限らない。天気次第と言う仕事だ。 
 
職人不足はどの業種でもあるが外の仕事とか危険なのは特に足りない。2社ある基礎屋も職人は60代以上が主流だ。跡継ぎの若社長が40代で一番若いが職人はベテランだ。後何年続くかわからないが職人たちが引退するときが必ず来る。 
 
天気に左右されたり泥や埃にまみれたりと典型的な3K職場だ。アルバイトに来るものまで年配者が多い。5,6年もすると元気の良い老人クラブみたいな雰囲気になるだろう。以前に伐採職人たちが一服で集まってヘルメットを取るとエッと驚くような年配者だった。 
 
公共土木の会社もかっては老人パワーに頼っていたが近頃は若者が増えた。労働環境や賃金など業界あげて改善に努めた結果だろう。住宅業界も少しずつでも改善されると良いのだが。2,3人の零細企業では心もとない。 
 
当社でも難しい手刻みのできる大工が激減している。加工のための作業場も減ってやりたい若者が出ても環境が許さない。ただの3K職場でなく材料や加工機械が減って職人は極端に減りそうな気配だ。覚えることばかり多く肉体的にもキツくて現場も少ないとくればやるのがいなくなるのは自明の理だ。 
 
東京オリンピックに向けて職人不足は決定的なので高い手間賃につられて出稼ぎも出るだろう。地元の職人がさらに減ることもありえそうだ。


不便な構造

午前中は現場と作業場。現場は土留め工事の続き。作業場では大黒の刻みの真っ最中。午後は遅れている図面と打ち合わせ。図面が遅れて業者から催促が来た。 
 
大黒柱周りの納まりはお施主様も立ちあって決めた。曲がりの大梁がどのくらいの高さにくるかが重要だ。二階の桁高さは普通の家なら天井になる。吹き抜けから見ると二階床から上を見上げる高さに来る。曲がりの下端しか見えないし組んだところが見えにくい。 
 
私的には目の高さくらいに持ってきたい。そうすると大梁同士が交差するところも見えやすい。大梁の横腹を見れば太さも実感できる。下端は面白くない。組んだ大梁の間から照明が下がり点灯すると複雑な影ができる。 
 
何より梁の横腹が照らされたらグンと面白いではないか。二階の各部屋は天井がない。その代わり屋根の野地がそのまま見える。つまり勾配天井になる。その下に曲がりが交差して束には抜きが貫通する。その一番面白いところを横から見れると最高と思っていた。 
 
この現場の一番の面白さは多分二階から見た梁にある。その面白さを素人である施主に説明するのは難しい。見たことがないのと太さや長さに現実感がないからだろう。見たことがないものを説明するのはしんどい。 
 
岩手の山奥にどんぐり村というイベントがあって行ったことがある。なんの変哲のない板張りの蔵に入ってびっくりした。梁が仕上げのない栗の半丸太で組んでその太さと横架材距離の短さが半端でない。太さはともかく低い梁が頭にぶつかる。 
 
その不便さは逆に構造材の存在をいやが上にも印象つける。造り酒屋の蔵を解体しているのを見たことがあってその時も太さと低さにびっくりした。その印象が強烈でいつかはその構造をやってみたかった。頭がぶつかるほどでなくともかなり低く抑えたい。その分梁などの存在が強烈に感じる。 
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構造現し

昨日から現場に基礎屋が入る。まずは後ろの土留めから。午前中は現場で写真を撮ったり打ち合わせ。午後から作業場でお施主様と大黒や大梁の墨付けの打ち合わせ。大黒柱と大梁がリビングで交差する。その高さをいくらにするか、 
 
どの程度まで組み込みを深くするか。これが1階の床から見たイメージを左右する。2階床から見た感じも重要だ。1階は天井が高く大きな空間を見せたい。上には曲がりが交差し古民家の風合いを強く出す。2階の床からは曲がりの交差と屋根なりの垂木を見る。 
 
1階天井は2階の床の裏側だから天井ふところがない。2階の天井は屋根垂木と野地の現しになる。いずれも構造や素材をそのまま見る形式だ。全て現しだから電気配線で苦労する。ガイシ配線も考えたが手間がかかりすぎる。 
 
文字通り昔の藁葺き屋根の天井仕上げのない構造を踏襲している。雲筋違も貫で栓をする。もちろん現代の住宅であるから筋違とか金物は使う。できるだけ見せないように隠したりカバーする。その手間だけでも相当かかる。 
 
メインはもちろん曲がりや大黒だが目が良いとか節のないと言うことに特にこだわらない。むしろ節があったり腐ったりしていても太さや迫力を優先している。ここを引き立たせるための小道具に構造現しがある。お施主様もずらり並んだ大物にかなりご満足いただけだと思っている。
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