秋晴れの一日で快適そのもの。午前中は床屋へ行きその後歯医者に。午後から伐採の現場で建築材として出す木を選定。直径を図り曲がり具合を見ながら樹種を見て決める。その後作業場へ行き大工と打ち合わせ。細部の寸法がアヤフヤなところがあって原寸を描く。
手刻みは墨付けが肝心だ。図面上の設計は設計事務所の仕事だが刻みは大工が決める。設計者のイメージと刻みの寸法は一致しない。イメージ優先か原寸で工事のやりやすさ優先かだ。設計事務所の現場は一般に複雑なので大工は苦労する。
一つには木造の構造をよく知らない設計者が多いのもある。イメージ通りに施工しようとすると複雑な構造になったりする。大壁の家であれば隠れてしまうのでどうにかなる。全て隠せるのは大工には楽な刻みだろう。
問題は真壁で全て見える場合だ。隠す部分がないから仕掛けも構造も複雑になる。しかも設計者が伝統構法に熟知していないと納まりが理解できていない。設計者がわからないものは大工とてわかる訳がない。
原寸を描いてあーだこーだと材木を前に揉めることになる。私と息子でも毎回もめて親子喧嘩になる。親子だから喧嘩になるのかもしれない。大工にすればセオリー通りに普通に仕上がるなら問題がない。
特に多いのは細部の納まりが前例のない方法を要求することだ。オリジナルと言えば聞こえは良いが設計者のワガママみたいなものだ。無い物ねだりで大工は慣れないオリジナルに付き合わされる。
真壁の構造は経験の積み重ねでできている。長持ちする頑丈な方法を長年かけて完成している。一時の思いつきで変わったやり方を押し通せば大工が悩むことになる。悩みたくない大工は怒ると言うことだ。
毎度現場ごとに揉めて大工が泣くか設計者が諦めるかどちらかだ。真壁の設計者はほとんどいないから真壁で家を建てたがらないのが普通だ。設計屋の現場が嫌いだと言う大工は多い。特に墨付けをする大工が嫌がる。