青森県八戸市の一級建築事務所 建築組 パックス有限会社

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コストか資金繰りか

いつにも増して暖かい。外部塗装を予定していたので塗りには最高の天気です。塗料は一般的に気温が低いと塗りにくい。今回は水性なのであまり問題はないのですが氷点下はできない。大工3人はさすがに捗り天井下地や壁下地を組んだり板張りの準備をする。 
 
午前中は春からの現場の打合せがあった。朝早めだったので暖房が追いつかない。気温が高いのはラッキーだったが。昨年夏からのスタートで準備はできていた。自分のところの唐松を使いたいと思っていた。 
 
普通は外壁用の板は15ミリを使う。和風だと杉で洋風には唐松も使う。杉よりは硬くて風雨には強いが反り捩れが強い。だからガッチリ上から押さえつけるように止める。できるだけ切り口は表しにしないと割れが入る。 
 
今回は自分の山と言うこともあり厚く挽いた。18ミリで挽いて加工済みで15ミリ以上にしたい。土台も梁も唐松にする予定だ。3年ほど前に買った唐松の梁があって挽き直して使いたい。唐松の梁は真っ赤になって艶もあるので綺麗だ。 
 
米松の丸太の輸入禁止で代用品として唐松の需要が出た。余っている杉などに比べかなり高値で取引される。今あるのは樹齢50年以上直径も50センチクラスが多かった。このクラスになると表しでも十分使える。 
 
一緒に伐った杉も15センチ角に挽いて積んである。それを12センチに落として修正する。通常乾燥在庫の場合は13センチぐらいに挽き12センチに落とす。これだと割れや曲がりを取るにはギリギリすぎる。コストがかかるが狂いが出にくい。 
 
なんだかんだと今年も現場が出てきそうだ。問題は乾燥した材木が用意できるかにかかる。製材所とか材木屋から買えば手に入るが値段が高い。コストを下げるためには丸太から用意する方が良い。コストか資金繰りかで悩むことになりそうだ。


詳細図

日中は気温も上がり大工も作業場捗る。残材とかゴミを搬出して自宅倉庫へ運ぶ。ゴミと使える木材とに分け別々に収納する。羽目板とか日に当てられないものは別な倉庫へ入れる。 
 
図面作成が溜まって片付けに追われる毎日だ。打ち合わせ用の確認事項のための図面とか様々だ。ただ口で言うよりも図面があればお施主様は理解しやすい。図面は基本的に寸法が正確でないと描けない。 
 
家具図面でも使用する材料の厚さとか長さがわからないと作れない。大きな材料から何枚取れるかで発注量が決まる。資材発注は図面が正確でないとできない。建材なども拾い出しは図面から計算する。 
 
お施主様と打合せる図面は意匠図面で業者と打ちあわせるには詳細図が必要だ。意匠図面は描けても詳細図がわからない設計者もいる。現場経験がないと描けない。設計屋の中には法規とか計算が得意でも現場詳細図がわからないのもいる。
 
最新のデザインには強くても木造のそれも古民家風となると詳細図は難しい。大工を納得させるような図面は相当詳しくないと描けない。材の寸法ぐらいはわかっても仕口や見付けまではわからないからだ。 
 
以前なら棟梁クラスが図面を大工用に翻訳して図板に落としていた。今はベテラン棟梁がいないのと図面に慣れた若い大工が図面を要求する。当社では基本的に私は意匠図しか描かない。息子が全て寸法や仕口を決めている。その代わり仕上がったイメージを伝えている。


虫喰い

今日も朝は冷え込み日中は和らぐ。午前中は図面で午後から材料の配達。本来は大工の仕事なのだが時間が惜しいので私が運ぶ。作業場には毎日行くわけではないので在庫などを見るには都合がいい。 
 
昨年の12月に伐採した杉が製材済みで在庫をしている。次かその次あたりに使えるようになる。丸太は秋に伐って冬に製材をすると春の乾燥期で乾く。逆に春に伐って夏乾燥だと最悪だ。 
 
虫は繁殖するしカビが生えて黒くなるしこれだけは避ける。虫は何種類かあってひと冬ぐらいでは死なない。前年に挽いた材からも虫が出てくる。作業場には常に在庫があるから新しい材木が入ると移るのだろう。 
 
つきにくいのは杉で虫も昆虫だから広葉樹は好みだろう。虫は皮と白太の間に入るので製材する際には機械で皮を剥く。伐採のゴミや小石を取るのと皮を残さないためだ。 
 
ところが当社自慢の曲がり材は機械で皮を剥くのが面倒だ。ほんの少しでも皮を残せば必ず虫が入る。在庫をする際は手で残った皮を剥かないとならない。忘れると穴だらけになって使い物にならない。 
 
虫は一箇所から入ってもあちこち食い散らす。木には白太と赤身があって白太だけしか食わない。悪いことに製材すると皮に近い部分を使うから必ず出てくる。曲がり材が出回らないのはこう言うリスクがあるからだ。


後を継ぐ

昨日に続き日中は暖かい。朝晩は氷点下6度でも気温が上がり溶けてくる。午前中は打ち合わせ午後から作業場から現場へ配達。さすがに3人もいると作業が早い。外部は大体できて内作に入る。 
 
板金屋が廃業することになって最後の付き合いになる。職人が70歳を超えて辞めるので仕方がないと言う。肝心の社長も病気になって入院する騒ぎになった。先代が早く亡くなって長男と奥さんとでやっていた。 
 
実は板金屋の先代は私の叔父にあたる。社長は従兄弟になるが付き合いは子供の頃からだ。紆余変局があって私の方が建築の世界に入った。従兄弟は子供の頃より板金屋を継ぐ予定だったから業界は長い。 
 
跡を継ぐものがおらず廃業の道を辿る。業界の中にはあと何年も続かないだろうと言う候補が沢山いる。子供が継がないとか職人が減ってできないとか様々だ。 
 
当社も設計事務所としては私で最後かもしれない。大工の息子は設計の道は進まないと思うからだ。職人として生きることを選択したがある意味正解もしれない。設計とか請負はだんだん厳しさを増すと思われる。 
 
職人は減る一方だから仕事を選ばなければ続けられる。特に伝統的な職人は激減の一歩だからほぼ競争がない。仕事は減っても無くなることはない。歳を取っても体さえ元気ならいつまでも続けられる。設計の道よりも将来的に可能性が高いかもしれない。


板張り

穏やかな一日で日が出ると暖かかい。大工は今日も3人。外部の軒裏を張っている。早めに外部を仕上げて塗装したい。塗装ができないと雨樋をつけられない。雨樋がないと雪が溶けて足場に当たって外壁に跳ね返る。 
 
人数が多いのは何かと早くできる。内部は半分ほど天井が仕上がった。天井は4寸角を45センチごとに流しその上に板を張る。根太表しの天井のような仕上げになる。豪快さと繊細さが混じったような仕上げになる。 
 
張る板も用途に合わせ厚さ実形状が異なる。外部用は厚く内部も天井は実なしで腰板は実がつく。板の間が開くか開かないかの違いがある。実なしの突きつけ仕上げは後で乾燥して隙間ができてしまう。 
 
目の高さにある腰板は隙間が目立つ。天井だとあまり目がいかないし気にならない。実のない腰板は隙間にゴミが詰まらず良いと言う方もいる。仕上がった時に目地があれば陰影ができ奥行きがある。 
 
ただ板張りと言っても用途により厚さ実形状はては木目までこだわる。多めに用意して柾目と板目、赤みと白太は分けている。余ったものには種類ごとに墨で書き込む。しまう時に分けておくと使う時にすぐ出せる。 
 
木の家は熱意とこだわりが仕上がりに出てくる。すぐはわからなくても手間暇かけたところは劣化や痛みが違ってくる。在庫も増えるし統一して使う方が効率はいいが仕上げは確実に落ちる。