青森県八戸市の一級建築事務所 建築組 パックス有限会社

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木造とは言いながら国産無垢材と大工の手刻みの家でなくなった。そのことに特に違和感もなく”そうなんだ”と言う方もいる。車で言えばタイヤが天然ゴムでなく合成品になっても走りに変わりがないのと同じだ。性能有りきで素材やましてや加工法には誰も関心がない。

最近の施主と業界の人間、特に年配者にはかなりの思い違いがあるようだ。山にある木を出して製材乾燥し大工が刻んで建てる当たり前のことが理解されていない。植林された木は樹齢50年を超え出番を待っている。その出番が集成材工場や紙の原料であるチップなのは普通になった。

木の家の要望は根強いものがあるが実態は仕上げ材としての木だ。見た目優先は”デザインが命”と言う言葉のように家電品の一部のような扱いだ。構造材としての無垢材の認識は車のタイヤのごとくで耐震性とか機能の面でしか評価されない。CIMG0832

古来家は近隣の木を伐採し大工が建ててきた。このリサイクルシステムにより里山は活用されて暮らしの一部になった。ところがこの近隣の木のリサイクルが壊れて放置や手入れ不足になった。木の値段が下がり売ろうにも採算が取れない。ましてや自分の家にも使われずじまいではどうしようもない。

杉は植林して10年くらいは下草を刈ったり間引きしたりする。大きくなればさらに間引きをして枝打ちをする。手入れのない山は曲がったり折れた枝で二股になったり価値が大きく下がってしまう。手入れ不足の山は密集し枯れるのも出て子孫を残そうと杉は花粉を大量に撒き散らす。

自分の木を出して建てたい方がいて山に行く。大概は樹齢が50年前後で出すには少し早い。もう20年もすれば銘木にもなろうと言うのが多い。山出しには原則があって樹齢と出すルートが必要だ。道路に面しているなら問題はないが他所の土地を通るには問題がある。CIMG0813

樹齢は生えている場所にもよるが最低50年は欲しい。枝が多く曲がったり割れたりした木が多いと価値が下がる。伐採工賃を出た丸太で払うのが多いから丸太の価値が低いと赤字になる。

場所も急峻な崖とか谷底では引き上げるのに苦労する。ある程度の面積が必要で5本や10本倒しても総金額が低すぎて採算が取れない。100本単位で倒す必要があるので面積にすると1町歩(3000坪)くらいは欲しい。

丸太を倒すと玉切りと言って長さを揃える。木は下が太く上は細い。だいたい20mくらいはあるから4mで4本は取れる。下から一番玉、2番玉、3番玉と数える。製材する価値は直径が30センチあるかどうかで決まる。1番玉と2番玉までが製材品、3番玉は合板用、4番以降はチップになる。CIMG0818

ご存知のように丸太は節の有無で大きく価値が決まる。1番玉は最上でほぼ無節が取れ2番は取れるのと節有りがある。山を見る際は立った状態で目の高さ(目通り)で直径を図り節を見る。見に行ったら目ぼしい木の直径を図りグルっと一周し節を確認する。何本あるかで山全体の金額が計算できる。

丸太は石(こく)という単位で直径✖️直径✖️長さで決める。石数と本数を数え石単価を入れると金額が出る。伐採工賃と運賃を引けば残りが売り上げになる。相場が安くて出す量が少ないと赤字もあるのである程度量を確保する。

自分の木で建てたい方の関心は材木で買った場合と比べてどうかだろう。40坪前後の家で手刻みすると構造材が150万円くらいになる。必要な丸太はおよそ1番玉で70本金額は60万円製材賃50万円運賃10万円伐採工賃40万円となる。70本を倒せばチップや合板に40万円くらいに売れる。伐採工賃40万運賃10万製材賃50万合計100万円。売り上げは1番玉60万チップ合板40万合計100万になってちょうどになる。およそ70本の倍140本倒して自分が使う材が出て差し引き0になる。

140本の山出しだと山によるが面積でおよそ1町歩ぐらいは必要だ。相当な面積になるが自分の家の材木代をひねり出すにはこの位必要だ。そして伐採工賃や運賃、製材賃は刻みの前に支払いなのでそれも用意しなといけない。

メリットは縁のある木を使えるのはもちろん選んで使えるの本来高い材木を買うのと同じになる。手間はかかるが良い木を使ってご先祖に縁のある木で建てることができる。一にも二にも山の状態次第で採算から材の良し悪しまですべて決まる。
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