山から出すには使う量より多めに出さないとならない。丸太の価格が高い時は少なくて済むが今は最低に近い。採算ベースだけで考えたら大きなメリットはない。仮に伐らないで放置しても手入れも必要だしいずれ売る時が来る。その時の相場がどうなるかわからないが上がる予想は少ない。
毎日住む家がご先祖が植えたものだと思えばこれほど嬉しいことはない。何事もつながりが浅くなる現代で自分の子供を先祖の木の家で育てるのは意義があることだ。伐った山にはまた苗木から育てると孫世代に使えるようになる。
放置すればただの山林でも使うことで先祖とのつながりを持ち、木の家に住めば健康住宅になる。買うと予算的に厳しいことも内外に板張りが可能になるとか柱も4すんでも5寸でもまた天井も高くできる。できる限り製材して構造はもちろん仕上げにもフルに使えば個性的な家が出来上がる。
プレカットの家の木材使用量は極限まで減らして集成材を使う。集成材は初期強度は優れているが長期には貼り合わせの糊が寿命になる。初期強度が強いので柱も3.5寸が多く細くなる。仕口も浅くホゾも短いので金物で締め付けて保たせる。
自然素材と違い張り合わせの糊からシックハウスの原因となる物質が微量ではあるが出る。家全体であるから微量でも影響がある。さらに大壁と言って柱や梁を隠すのが一般的だから長期に渡り少しずつ発散する。仕上げに使うビニールクロスも糊と素材自体からも出る。
建材は基本的に化学製品であるから使用物質の制限がある。禁止されても替わる物質をすぐ開発するから無害になる訳ではない。メーカーはコスト最優先で利益を上げることが最終目的だから安全第一とは限らない。
自然素材住宅であっても建材を使わない家はコストがかかってしまう。バランスの問題で基本的には柱現しで漆喰などの吸湿や吸臭の機能を持った仕上げにしたい。板張りも柱を取った残りから板を製材し使える。できるだけ持っている資源を最大限に活用した作りにすれば健康にもコスト的にも有効になる。
柱、梁は現しにするためには目の良い節の少ない方が向いている。捻れや狂わないように良い丸太から取るのが基本である。良い丸太は価格も高く選んで買うと高くつく。自分の丸太であれば何本か良いのを選べば良い。挽く時も効率一本槍でなく良い目を出すような挽き方をする。こうすることで目の綺麗な無節の良い材料を現しにできる。
昔は良い材料を取るために山から出した。山持ちの一番の贅沢で資源の活用法だった。残念なことに製材所は廃業が相次ぎ材木を在庫するところもない。せっかく良い丸太を出しても並みの値段で取引され市場に出回らなくなった。今では自分で出して選ぶよりないのが現状である。
終戦後70年も経って50年以上の丸太が山に大量に蓄積されている。木は年数により間引きで間隔を開けている。放置林は太くなってお互いにぶつかり枝が枯れたり変形する。年数が来たら出すか間伐をしないとならない。山はいつも生きている。
木を出すには昔は山師と呼ばれるブローカーがいた。山主から買って出して売る商売だが丸太が売れなくなってしまった。代わりに森林組合などが伐採運搬をしてもらえるが製材はやらない。さらに手刻みをする大工がいなければ乾燥や保管ができない。これらの業者の手配や交渉を施主自身ができないので近年は滅多に行われなくなった。
当社はできるだけ自分の山の木で家を建ててもらいたいと思っている。伐採は運搬はもちろん製材や保管まですべてできる。経験のない者には難しい職人の手配や現場管理もノウハウがある。山主だけでなく市場で丸太を購入して製材するのでどのような材をとるかもわかる。これらを一貫してできるノウハウがある。