午前中に金物の検査、滞りなくパス。大工はサッシの取り付けと断熱材の貼り付け。終わると外壁の板を加工して鎧貼りになる。なんとか年内に終えたいのだがどうなるか。板は簡単に貼るのだがささらをつけるのがえらく時間がかかる。
鎧貼りは杉の板を下見に貼ってその上にささらと呼ばれる縦桟をかぎ型に加工してつける。このかぎ型に加工するのに一つずつ合わせる。言うのは簡単だが板を張る際にほんの少しでもずれると加工が全部ずれる。ひとつずつ丁寧に加工しながらなので時間がかかる。
この作業は大工の性格にもよるが大雑把な職人だと皆隙間を空ける。見た目はもちろん耐久性にも影響するのできっちり仕上げたい。一つずつ山に合わせて切りながらの作業は半端でない時間がかかる。昔の大工はこう言う作業を延々と時間をかけてやったのだろう。
古民家の良さはこう言った丁寧な仕事が随所に見られることだ。手間賃も安く人手も豊富な時代の名残と言えば言える。スピード最優先の現代ではとてもできることではない。良さを認めて建てようとする方も予算との兼ね合いでなかなか実現しない。
インバウンドが増えて日本的な家も見直されている。海外で負け続ける企業や経済成長そのものがパッとしない。自信をなくした日本人に元気を出せと日本賛歌的な傾向が出て来た。
文化はともかく建築の観点から言えば世界的に通用するような建築は少ない。特に住宅に関してはウサギ小屋的発想から抜けきれていない。小さく安っぽい古い住宅があまりに多い。リフォームも進まないし直しても元に戻っただけだ。
新築もまだまだ小さく似たような一律のデザインが多い。気鋭の建築家は中国での仕事が増えている。そう言う仕事を依頼する層が出て来て面白そうな建物が多い。一部の層と言うには膨大な数の中国である。ここ20年くらいに建てたものばかりだからデザイン的にも進んでいる。
中国人が日本に来たら古臭く小さい建物ばかりでがっかりと言うだろう。ヨーロッパのような石つくりとまではいかなくともせめて本物であればそれなりに見栄えする。鉄板と偽物のサイディングはあまりにみすぼらしいと思うのだが。