国産材の現状についてどれだけの方がわかっているだろうか。郊外を車で走るとあちこちに潰れた製材所が見える。廃業したかたまにしか営業していない。
青森県内の丸太の生産は60万立米そのうち大手の集成材工場が12万立米を買い取る。かっては120万立法も出したが県外に出荷する量も多かった。県内消費量が減ったので製材所も成り立たなくなる訳だ。
山林所有者でも林業で生計を立てているのはほんのわずかだ。大部分は相続などで分割された山林所有者だ。自分の山に入る道路もなく手入れもしない放置林が増えている。
当社は自分のところの山の木で家を建てると言うのを推進している。自分の所有でなくても曽祖父伝来の山を持っている例は多い。家を建てようと思う時に思い出す。そして初めて現地の山を見ることになる。
自分の山の木で家を建てるには山を見て調査が必要だ。搬出するルートがあるか、適した樹齢かを調べる。まず出すための道路がないと難しい。杉など針葉樹であれば樹齢50年以上は必要だ。伐採や搬出には経費がかかるので先払の費用が発生する。
搬出と樹齢が解決できても費用の問題がネックになる。自分の使いたい量より多く出して一部を販売する方法が現実的だ。売却した分で伐採、運賃を支払う。持ち出しがなく先祖の木を使えるのとある程度選んで使える。
過去にこの方法で家を建てた方は何人かいる。金額的に利益を出すというよりも太さや使用量に制限なしで建てられる。これが一番のメリットになる。太い柱や板張りの内装とか自由に製材してオリジナルの材料を作れる。
注意しなければならないのは原木市場が安く丸太販売は厳しいと言うことだ。10年以上前であれば杉で石4000円位したものが3000円以下になってしまった。素人が考える金額よりも大分安くなっている。
樹齢が若い等級が低い丸太が多く出ると工賃や運賃と相殺になってしまう。樹齢は7,80年クラスでないと赤字になる可能性がある。その場合でも一番玉と呼ばれる下の太い部分だけが上物になる。半分以上は二番玉以上になるから安い丸太が多くなる。
まして若い木が増えると等級も低くなり持ち出しになってしまう。建て主の中には山の存在は知っていても樹齢とか種類など把握している方は少ない。木の種類、年数、面積、道路の有無これくらいは把握する必要がある。
次に自分の家に使うためには製材、乾燥が必要になる。丸太の状態で放置しても乾燥しない。製材して桟積みをして乾燥する。当社では1年近く乾燥した材木のみを使っているので相当期間が必要だ。
伐採時期もあるので冬に伐りすぐ製材乾燥して夏以降に建てるのが一番最短になる。出す量も使用量より多く出し一部は丸太販売をする。製材後の余った材木は当社で買取をする。伐採工賃、搬出運賃、製材工賃を丸太販売でカバーできれば持ち出しはなくなる。
自分の山の木で家を建てることは二重に意味のあることだ。ご先祖が植えて手入れをした思い入れのある木を使える。地球環境のためにも放置でなく手入れをすることは重要なことだ。単に経済的なメリットだけだと難しい。原木市場の低迷とは逆に伐採や製材の工賃は高い。その中で自分の山の木を使うことは次の世代に受け継ぐ上で重要なことだ。