青森県八戸市の一級建築事務所 建築組 パックス有限会社

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職人の世界—–加工機械

手刻みとか手作りというイメージにはノミ、カンナだけで建てるイメージがある。
大工が手押しカンナでやるのは大昔のことだ。カンナ盤と呼ばれる電動の機械が登場して4,50年になる。
製材された材木は乾燥の間に曲がったり捻れたりする。直角に決められた寸法に揃えないとならない。押しながら削る万能木工機を昔の大工はほとんど持っている。中古で30万新品だと7,80万くらいか。

押さなくても自動で削れるタイプには直角二面と上下二面の自動カンナ盤がある。先に直角を決めて平行を通して使う。
二つないと不便で平行は板とか厚さを決める時にも使える。厚さはデジタルになっているので簡単にしかも細かく加工できる。厚さを揃えたい時とか現しでは加工する機会が多い。直角は自動送りにしないで手押しで加工したりする。DSC_4934

ネットなどでも新品の値段は出ていない。メーカーや機械屋と交渉になるが何百万単位になる。
手刻みの衰退で機械を手放したいところが多く中古市場も活発だ。処分しようにも鋳物製が多く相当高く付くからだ。中古と言ってもピンキリで百万くらいから上は外車が買えるほどになる。

中古の中には40年物とかが出たりする。本体は壊れないのでモーターさえしっかりしていると刃物は消耗品なので保つのだ。
メンテナンスが重要で刃とかベルト類など消耗品がかかる。カンナ盤は荒仕上げなのだが刃が切れないと余計凸凹になる。新しい刃物にすると手カンナがいらないくらいだ。DSC_4933

設置で大事なのは削った鋸屑の処理だ。性能が良いカンナ盤は猛烈に鋸屑を吐き出す。
一々集めたりしていては大変なことになる。ダクトパイプで集めてサイロのようなところに貯める。家一軒ともなると2トンダンプに満載で4,5台にはなる。パイプで機械とサイロを接続して送風機で送る。

意外とかかるのがサイロだ。鉄製で下から口を開けて落とすタイプが多い。当社のは下にモータが付いていてトラックに送ることができる。
最初からサイロがあって使わないでいた。それが使えることも設置を考えた一因になっている。新たに作るとなると何百万もかかるだろう。DSC_4946

他にも作業場には機械がゴロゴロしている。刻みの時に仕口を作るホゾ取り機、割ったするバンドソー、超仕上げカンナ盤、卓上ボール盤…..キリがない。
それらを少しずつ揃えて加工を早くできるようにする。機械にかけるか大工に手間賃を払うかだからいずれ揃えることになる。

機械なしで手刻みをやろうとしても人件費が増えるだけだ。しかし機械は維持費もかかるし何と言っても稼働率だ。使うほどにコストが下がるという事だ。
手刻みが減ってきたら宝の持ち腐れになるし借り入れも返せない。今後大工が減る事を考慮しても機械にコストをかけるのは止むを得ない。CIMG2289


職人の世界—–吊るし切り

廃れる運命にある職人は数多い。その中でも伐採職人の吊るし切りは特別だ。
そもそも伐採職人は激務と事故率の多さで減る傾向だ。あまり脚光を浴びる事もなく地味な仕事である。最近山仕事が映画化されたりちょっとだけ見直されている。

最初に吊るし切り職人の事を聞いたのはもう10年前になる。やってきたのは60代と思われる背の小さい職人。
仕事にかかるとスルスルとまるで猿のように木に登っていく。身のこなしは見かけとは全く違う。

家の周りに木を植えるのは田舎では普通の習慣だ。家が建ち始めると倒せなくなる。
崖崩れ防止に植えたので大木になると倒れる危険が増す。大風の夜は隣に倒れたりする心配で眠れぬ夜になる。伐採を相談されて欅の大木欲しさに請け負ったこともある。CIMG3605

製材所や伐採職人と相談の上で吊るし切りを呼ぶ事になった。特殊技術と危険手当もあって手間賃が3倍。
しかもスケジュールも詰まっているので向こうの言いなりになる。クレーン車とグラップルを用意して決行日になる。

まずはロープを担いでクレーンのフックに掴まりながらあっという間に木に登る。上に着いたらロープを木に引っ掛け今度は自力で降りてくる。
次は根元をチェンソーで伐る。伐りながらクレーンで持ち上げゆっくり倒す。CIMG3633

一本倒すのに30分ほどかかる。普通に倒せるのは吊るさないから本数は少ない。
欅など枝が多い木は登って行くのに自力になる。どんな大木でもクレーンは15トンくらいは吊れるので登りさえすれば倒せる。杉など長さがあれば降ろしても倒せないので途中から玉切りをして伐る。

伐採の世界は冬仕事になる。夏は農業というのがいて約束を守ると言う概念が薄い。何たって農作業優先でアルバイト的な感覚がある。
しかし今では一年中伐るし職人も専門化されて掛け持ちも減った。若い伐採職人は森林組合などに多くサラリーマン化した。CIMG3595

夏伐りは水分が多く乾燥にも時間がかかり価格も安くなる。伐ったらそのまま寝かせて葉枯しと言うやり方も多い。時間と手間が二度現場に行く事になって高くつく。
寒伐りは職人も農閑期で乾燥にも都合が良い。山の寒さは街中より2,3度低くて隠れる所もなく強烈だ。立ち会でしばらく立っていると長靴の底が凍ってくっついてしまう。

写真の吊るし切りは二度目の住宅街の伐採だった。10年経ったら息子に代替わりしていた。
親子なので直伝で一人で来るところも変わらない。年齢は40代後半と言うところか。その時の木は樹齢5,60年の杉とサワラで小さい方だろう。もちろん木は私が全量買い取った。CIMG3637

学校など公共施設や住宅街でも5,60年を越した木は簡単に倒せない。吊るし切り以外に方法がない。需要は増えていると思うが職人が増えたと言うのは訊いたことがない。
高所作業車を使うとか足場を組むとか金がかかる方向に向かっている。労災の面から問題視されることもあるからいずれいなくなる可能性が高い。


職人の世界—–塗装屋

内外部を塗装する通称ペンキ屋。新しくて古いのが塗装。
京都の方では壁はベンガラとか柿渋で仕上げる。荏油とか桐油など昔は防水も兼ねて油を塗った。壁には柿渋が一番有名だが無色透明のニスとかラッカーが増えた。
硬くて綺麗に仕上がるのがウレタン塗装だ。シンナーを使うと乾燥が早い。水性も増えて学校関係とか指定されるが乾きが遅いのが欠点だ。
最近は輸入品のリボスとかオスモが人気だが亜麻仁油とかひまわり油を使っているがイソパラフィンも少量含まれる。実際使用してみると塗りたては化学製品の匂いが少しする。すぐ消えるが全くしない米ぬか油とか蝋に比べると工業製品だと感じさせる。

米ぬかにしても蜜蝋ににしてもウレタンとかニスよりも値段は高い。材料費も塗り工賃も違うのでこだわれば高いものになる。
オスモやリボスにしても米ぬかでも自分で塗ることは簡単だ。素材によって難易があってマダラになり易いのと粘度があって塗りにくいのがある。
自然塗料は一般に木の表面に染み込むタイプが多くウレタンとかニスは膜を作る。仕上がりの違いは歩いたり触った時にサラッとするかヌルッとするかだ。
特に杉などの無垢のフローリングは歩行感が一番なので自然塗料の方が向いている。耐久性が少し低いので後で塗り直すことも考慮しないとならない。20090802_1327878

ラッカーやウレタンしか塗ったことがない塗装屋もたまにいる。無垢でないフローリングや真壁でない家は内部塗装があまりない。
自然塗料を使う家はこだわった家つくりで一般的でないので塗り方すら知らないのもいる。塗装工事は昔内部が真壁の時にラッカーなどを塗っていた。
外部も無塗装のサイディングに吹き付け塗装するのが多かった。今は内部仕事はコーキングだけで外壁も塗装品が増えてコーキングのみが多い。住宅の仕事は激減してただのコーキング屋になってしまった。

塗装屋の職人は修行もあまりなく2,3年で簡単な仕事はできる。コテを使った仕上げやリシン仕上げなど吹き付けも減ってしまった。
スピードが命の住宅会社は1日でできるコーキングだけの仕上げを選ぶ。そうなると余計素人に近いものでもできるようになり競争になる。
リフォームブームに乗って屋根とか外壁の塗装を直接請負が増えた。塗装屋は2,3人規模が多く大型物件になると協業して仲間と組む。ビルの塗装とかになると10人くらい集めないと終わらない。こだわった塗装など縁がないいわゆるペンキ屋がほとんどだ。DSC_1036

似ても似つかない仕事が漆仕上げだ。塗るというより擦り込む感じに近い。ごく一部のマニアックな方でないとやらない。
値段はもちろん工事も埃が大敵なのでガッチリとシートで覆い何日もかけて仕上げる。その間は誰も現場には入れない。家具塗装としてはよく見かけるが工事現場では滅多にない。
展示場は下駄箱カウンターとキッチンを漆にした。耐久性も耐水性も日焼けも素晴らしいがとんでもない金額になるのは間違いない。


職人の世界—–屋根屋

上から読んでも下から読んでも屋根屋。住宅では板金屋と瓦屋がある。
暑さ寒さから逃げようがない屋根の上で危険なものあって後継者不足の際たる業種。特に板金屋はどこでも60代が多くて一番若いのが社長という業種。社長は息子だから若い。
住宅の仕事より大型物件の屋根工事が稼ぎの主力。土方と並び雨には弱い職業で昔から休みが多い。
瓦屋は当地では一軒しかない。雪国は瓦屋根は負担が大きく雪止めも雨樋も取り付けが難しい。高級住宅が多いので仕事も少なく広範囲に現場がある。100_3217

板金は昔からあって鉄板の移り変わりで菱葺きとかヒラ葺き、立てヒラ、瓦棒、横葺きなどある。現在主力は立てヒラ、瓦棒、横葺きでガルバリウム鋼板がほとんど。
当社の展示場は銅板の一文字葺きになっている。耐久性は瓦よりあり軽いので神社仏閣でも予算が許せば使われる。
銅板は価格が変動制で見積しないとわからない。数奇屋とか超高級住宅でないと使われない。緑青が吹くまでは10年はかかるがそれからが強いと言われる。

瓦屋は北国では絶滅寸前で皆廃業してしまった。東京帰りの最後発が一軒だけやっている。
仕事が少なく仙台とか遠くまで現場がある。最近は住宅会社などが外観の差別化でカラフルな洋風瓦が増えた。
和風の三洲の燻瓦の激減で先々後継者不足もあって厳しい。燻瓦はモルタルで棟をつくったり技術がいるが洋風は難しくない。
燻瓦の現場は大型住宅が多いので瓦屋が来る現場は当社も力が入ったものになる。瓦屋根は棟が一番かかるので寄棟とか入母屋は相当な金額になる。CIMG0620


職人の世界—–電気屋

電気工事業者で、現場での通称は電気屋。
現代の生活の豊かさは水と電気だろう。給排水と並んで生活になくてなならないものだ。電気工事業者自体は昔からあるが工場とか電柱工事が専門だった。
住宅専門の工事業者が登場したのはまだ古くはない。職人も別で違う業種と言っても良いくらいだ。
給排水と似て県に登録後電力会社に工事の申請をする。電力会社の意向は絶対で全て沿う形で工事する。建物と外部の電柱工事は別で一緒にできる業者はない。DSC_0624

現場に出入りする職人のなかでも若いのが多い職種だ。高卒後4,5年で一人前になってその後の移り変わりも激しい。日給月給で基本は日当で計算して保険等を引いて給料になる。
技術も施工法もどんどん進歩するしIT化もあって若物には向いている。それもあって5,60代のベテランが少ない。逆に電柱などの重電関係はベテランが多い。
水道屋と同じで自社の特徴を出すのが難しく競争も激しい。太陽光とか新しい分野が出た時に対応が分かれて差が出てくる。

業者を変えると他社のアフターはやりたがらないのであまり変えないようにしている。物件の詳しい図面を残しているので施工した業者がアフターには有利だ。
大工や左官建具と違って見積も正確で業者間の差もあまりない。コンピューター化も一番進んでいるし職人らしさと一番遠い感じがする。高所作業車や車以外に大きな機械も要らない。泥臭い仕事も少なく後継者不足からは縁がない。CIMG3288