青森県八戸市の一級建築事務所 建築組 パックス有限会社

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職人の世界—–基礎屋

家を建てると最初に来るのは基礎屋になる。その前に地盤調査をやるから正確には一番ではない。工事をすると言う意味では最初だ。
設計をしていると現場へ何度も行くことになる。隣近所との挨拶とかとにかく周りが気になる頃だ。
基礎工事は地面を掘ってコンクリートを流す仕事だ。重機とかトラックが頻繁に出入りし騒音や埃を出す。
近隣が最初に工事に関心を持つきっかけになる。管理者としては最初に注意を払うことになる。

基礎屋は元左官屋が一番多い。左官の仕事がビルなどの床や壁の仕上げが主になった。コンクリートを流したり撫でるのは同じだ。
バックフォーとダンプトラックを用意すれば基礎もできる。少し違うのはスコップを持つことで左官は練る時に少しやるだけだ。
地面に穴をほり鉄筋を組んで型枠をつける。型枠は鋼製型枠が主流で型枠大工でなくともできる。鉄筋も工場で溶接された既製品を使う。CIMG2340

パワービルダーが登場して基礎の値段が下がり対応できる業者が減った。規模を大きくして機械化しコストを下げる。
できないところは夫婦とか親子とか少ない人数で住宅専門になった。中小の大工や工務店相手なので間が空いて左官でも何でもこなす。
当社も左官と共通の業者に頼んでいる。基礎が終われば漆喰の工事でまた来る。漆喰は他所だと滅多にないから基礎だけで工事金額が少ない。土木工事や外構なども出来るところが多い。

基礎工事は技術の差があまりない。こちらの指示通り真面目にやってくれるのが一番だ。
鉄筋径からピッチ、重ね全て図面に書いてあるのでその通りに施工する。途中で配筋検査もあるので業者の手抜きもあまりない。
あるとすれば配筋の設計が不味いことになる。基礎関係でトラブルがあるとすれば土留めとか外構部分が多い。
コンクリートの収縮割れとかで揉めることが多い。外断熱になって基礎も外側に断熱材を張って仕上げる。断熱材が柔らかいので上塗りのモルタルに亀裂やヒビが入りやすい。CIMG3451

コンクリートを打つ時には強度とスランプを確認する。
天気、気温によって決めていく。真冬でも防凍材を入れたりして工事はできる。時間計画の難しさと価格が上がる。
普通は1,2月は避けて最低気温が0度以下になる時は養生をして練炭などを入れる。流してから4日くらいは置いてから型枠を剥がす。
断熱材を張って天端をモルタル仕上げをする。天端はレベラーと呼ばれる柔らかいモルタルを流すこともある。生コンを流す前にアンカー位置を確認して固定する。

文字通り縁の下の力持ちなので基礎工事の段階では施主も見ても面白くない。すぐ上棟があってそちらが花形で準備もあるから余計だ。
基礎工事は地味で丁寧で綺麗に出来ると良しとされる。できあがったものが評価されることも少なくトラブルの時だけ呼び出される。
基礎工事の良し悪しは工事自体にあるのではなく事前の調査と設計で決まる。地盤調査の結果とそれに対応した配筋や施工法が重要だ。


職人の世界—–水道屋

水道屋と言うのは通称で給排水工事が正確だ。給排水及びその設備関係全てを施工する。
水道の普及でできた職業で年々仕事の範囲も増えて仕事量も増えた。以前は水道事業者の免許がないと工事ができなくて持っていない業者の名義借りが多かった。許可基準が緩和されて業者数が激増して競争も激しい。
初代がまだ頑張っているところが多く元の職業も様々だ。逆に言うとこれと言った修業がなくてもできると言うことだ。資材や器具の進歩が激しいからついていくのが大変だ。100_2742

水の便利さと豊富さが生活の進歩の源だから今後も増えて重要な職種だ。急な進歩はトラブルや手直しも多い。
許可業種でもあるし水道の検査もあるので水道事業者の方に顔を向けている傾向がある。施主や設計者の要望よりも事業者の回答優先の典型的な業種である。
業者独自の仕事もないしウリになるようなことも少ない。せいぜい丁寧とかアフターがしっかりしているくらいしかない。競争が激しい割には売り込みもなく経営的には厳しくなっている。

給排水は基礎工事の段階で施工する。べた基礎が増えてコンクリートの下に配管を埋め込むからだ。完成間際になって床下に潜ったり器具の取り付けをする。
器具や設備機器の進歩は激しいので常に勉強をしないとならない。床下の配管を間違えると器具付けの時に苦労する。
図面や打ち合わせに一番熱心な業種でもある。施工法の進歩で機械の種類も多く外部の掘削もあるのでバックフォーとかクレーン付きトラックと投資資金もかかる。新しいだけに進歩と業界の競争、さらに新しい職種との競争とテンポが激しい。CIMG3088


職人の世界—–建材屋

木の家がウリの当社でも建材店から仕入れる金額はかなりのウェイトを占める。断熱材とか下地の石膏ボード、外壁材…..諸々ある。
全て自分で加工したりするとトンデモナイ金額になってしまう。やらない方もいるがベニア類も屋根下地や床下地に張っている。
野地板よりも合板の方が強度も優れて施工も早い。床だって大引の上に根太を流すより厚い合板を貼れば強度も施工スピードも段違いです。作業する大工も仮敷きのベニアがいらないし。

施主との打ち合わせで決まるのだがどこまでこだわるかだろう。徹底的に昔のやり方で通したら手間賃も材料費も増えてしまう。
健康に配慮という流れに沿って言えば構造そのものからちゃんとやらないと無理だ。表面的な仕上げのみ無垢でもあまり意味がない。しかし内部までこだわって無垢にすれば相当違ってくる。
そこで問題になるのは金額的にどこまで見るのかということだろう。住宅会社のように建材多用のところとこだわったところがどのくらい違うかだ。CIMG2445

数字で表れなくても実感できることに満足しようと思えば出来ることもある。構造を無垢材にして仕上げも漆喰にすればクロス貼りとまったく違う。
そいう家でも断熱材も床合板も使っている。建具は無垢だがキッチンは既製品というのだってある。ユニットバスや洗面台も既製品も多い。
外壁もモルタル以外は建材になるが室内にはあまり影響がない。肝心なのは構造材の無垢と仕上げの漆喰だけは外せない。

キッチン、洗面台と並んでノリなどで作るのは内部建具だ。無垢材ではなくフッラシュと呼ばれるベニアの貼り合わせで作る。
扉とか無垢はあるが裏板まで無垢はない。オールステンレスとかホーローとかうたっていても引き出しとか細かいところは違う。接着もノリを使う例が多いので製品の扉を開けて匂いを嗅ぐとすぐわかる。
大事なのはメーカーのカタログを鵜呑みにしないと言うことです。予算もあるので無垢の製作品との差額を考慮しないとならない。CIMG2545

終戦後住宅が雨後の筍のように建ち始めた時に不足する材木の代用品として建材が出てきた。無垢板の代わりに登場したベニアは床壁天井とほぼ仕上げを覆い隠した。
時代を経てベニアの家は安っぽさから印刷や装飾で無垢風になってきた。突板など本物を貼る偽物が主流になった。これに左官仕上げからビニールクロス張りが登場して現代の家が完成した。
突板やクロスは下の素材を覆い隠してしまう。何が入っているか分からないのが問題になる。真壁にして外断熱にすれば一番わかりやすい。

突板やクロスは接着剤を使って施工する。規制が進んで安全と言われるノリでも大量に使えば前と変わりがない。
最小にするには無垢を使える部分は使うしかない。そうやってできる部分から少しずつ減らしていく。
建材を一切使わない家は難しい。減らした家を作るよりないが予算もあるのでできる部分を考えていくしかない。


有料か無料か2

昨日今日とコラムを上げている。HPを作る前から構想があって書き溜めていた。
それを一気に上げた訳だ。これからも随時書いていきたい。
週末はまた打ち合わせがあって時間を取られる。図面も進まず曖昧になっているのもある。
どういう訳か来年以降が多く時間があるからだろう。来年は消費税の駆け込みがまたあるのだろうか。

メーカーの営業が来て新しいカタログを置いていった。代わりに古いのを引き取ってくれる。
爆弾のように持ち込まれるカタログだが作りの立派さから高いと思われる。一冊3000円はするカタログを2冊も置いていく。
当社のカタログを欲しいと訪ねてくる方がいる。お見せする程のものはないから県産材の本をお渡しする。
大手は立派なカタログをくれるのでどこでもあると思うのか。大手とてタダで作れる訳がないからその分高くなると思わないだろうか。

10年前だったら考えられないくらい気軽に客が来る。もちろん嬉しいことで文句は言うつもりはない。
カタログを欲しいとか設計相談をしたいとか無料だと思うのが気になる。県産材の本だって当社がいくらか負担している。
打ち合わせを何日もしたら経費だってかかる。他所の業者はどうしているか分かりにくいがメーカーの営業は金を取っているだろうと言う。
会計事務所の方も言うしここはやはり有料と言うことになるのだろうか。図面をかいたりHPを作ったり忙しい。


職人の世界—–材木

木の家と言ったら欠かせないのが材木だ。
その元となるのが丸太、さらに木を伐るのが林業になる。冬に伐るので稲刈りが済んだらとよく言われる。
当社は山主から直接山の木を買って伐採している。杉と赤松、唐松が主でたまに雑木を呼ばれる広葉樹がある。
森林組合などの丸太入札で買うと良いのだけ選んで買える。直買いだと出たものはすべて買い取りなので良いのが出れば儲かる。
前払になるので製材した材木を買う方が資金的には楽だ。

山を買うとまず伐採職人を呼ぶ。重機操作が一人にチェンソーで3人ほどのチームになる。
今はグラップルで掴みながらゆっくり倒していく。残った一人は決められた寸法に玉伐りしていく。
出す量が少ないとグラップルで丸太を集めて専用トラックで運ぶ。大掛りになるとフォワーダとか運搬機械を使ったりする。伐採職人が伐って運送業社は製材所に搬入する。DSC_2859

山で出す時に重要なのは倒した木をどのように玉伐りするかだ。使いたい材木のイメージによって寸法を決める。
職人任せが多いが私は自分で指示している。定尺は4mで大型トラックの荷台寸法が8mなので決められている。
長ものを出す場合は倒した木を見て6mとか8mに伐る。山買いは長尺を出すのが一番の目的になる。長尺は規格外なので高くなるが山買いの場合はあまり変わらない。

出した丸太をどの様に挽くかが最大の見せ場でもあり楽しみの一つになる。柾目の無節の材は並材の何倍もする。
丸太の挽き方で決まるので製材する職工の見立てが一番重要だ。製材機は丸太を乗せる台車と回転する帯鋸で台車に職工が乗るタイプと鋸の脇に立って台車を通過させるタイプがある。
台車が通過する時に割った丸太から無節が出たら大喜びする。最初の割り方でほぼ決まるのでこの瞬間が面白い。CIMG3445

製材した杉は桟木を挟んで外で乾燥させる。いきなり倉庫へしまうとカビが生えたり乾燥が遅れる。
日に当てると桟木の型がついたり反るので時々向きを変える。季節によるが早ければ3ヶ月位で桟を変えて倉庫へしまう。倉庫が満杯だったり夏伐りの場合は長く外に置く。
当社では倉庫へしまう時に仕分けをして用途別に分けている。ここまで出来てやっと刻みに使える材木になる。

丸太から製材すると角の他に脇の半丸の部分から板材などが採れる。好きな寸法に挽いて各種仕上げ材を作っていく。
皮に近い部分は節のない材が出る。所謂白太と呼ばれる水分の多い生きている部分だ。割れたり曲がりやすいので十分乾燥させる。
赤身と呼ばれる中心部は古い木の部分で丈夫で強いが節が多い。赤身で無節は滅多に出ないので価値がある。CIMG3448

赤松とか唐松は梁材として節のないものは階段材とか仕上げ材として使う。製材要領や乾燥は杉と同じで特に赤松はアオと呼ばれるカビが出て黒く変色する。
伐り時に左右されるので冬しか伐れない。集成材の梁が主流になって使われなくなっている。当社では現しの梁などによく使う。
唐松はヤニが出るので見えるところには使いにくい。フローリングや羽目板に加工したりするが加工業者が減って難しくなってきた。

当社の売りの一つに大黒柱がある。30センチ角などの太さの広葉樹が中心で杉や唐松で作ったこともある。
欅などの硬い木で直径7,80センチクラスの長さが5,6m以上のから採れる。荒挽きで40センチ角くらいに挽いて4,5年は倉庫の中で乾燥させる。
使う時に挽き直して30センチに落とす。さらに2,3ヶ月置いて狂わせてからさらに手動のカンナで作る。加工も大変なのでリフトとか設備があるところでないと出来ない。CIMG0999

もう一つの売りに曲がりがある。赤松や欅、栗が主で杉や唐松のような真っ直ぐな木では作れない。
曲がりを集めるのが難しく伐採では曲がったものは全てチップ用に2mに伐ってしまう。曲がった丸太は運ぶのも製材するのも面倒でしかも需要がないので滅多に出回らない。山買いで自分で出すよりない。
乾燥も十分にしないと割れやすく曲がる。曲がりは言わば応力が変形してかかっているので製材も難しい。

何年も在庫をしたり前払費用がかかるので経営的に見れば採算が取れない。しかし魅力ある家が作れるのも事実である。
古民家風とか本格的な和風住宅を建てる時に一番重要なのが大黒,曲がり,無節の材木だ。これらは業者から手に入れようとしても難しく高くつく。
その傾向は今後も続くが伐採職人も製材所も無くなった訳ではないので当社は今後もこう言った住宅は建てていきたい。CIMG2074