青森県八戸市の一級建築事務所 建築組 パックス有限会社

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職人の世界—–建具屋

建具と聞いて段ボールに入った既製品以外を見るのは少なくなった。
建具屋と言う商売も激減の道を辿っている。辛うじて似たような職種の家具製作などで生き残っている。
住宅の建具が建材になったのはアルミサッシが最初で40年以上になる。今では木製サッシもかなり珍しくなってしかも高額だ。
内部建具は少し遅れて30年くらいにはなる。その頃から建具屋と言う商売も廃業が相次ぐ。

建具屋は基本的に作業場を持ち現場取付をする。現場にいる時間よりも作業場、大概自宅だが、が長い。
手伝ったりするので息子も見慣れて後継には不自由しない。問題は仕事量で建具だけでなく家具製作まで手を広げている。
本来は違う仕事なのだが木を扱うところや加工機械などが似ている。
建具は無垢材を在庫して天然乾燥をして作る。ベニアを使うフラッシュと呼ばれる建具が主流になって無垢は減っている。CIMG0163

一人もしくは二人くらいの規模が多く親子も多い。
無垢の建具を作れるのは親だけで息子の方はフラッシュしかやらない。無垢の建具は木を見ないと狂って後から面倒なので経験がいる。親子だと引退した親から聞けるので都合が良い。
製作は一人だが建て付け、搬入時には人数がいる。一人のところは仲間と応援しあって協力する。

当社は建具はもちろんキッチン、洗面なども作るのが多い。杉材が多くほかにも雑木などある材料を使うこともある。
杉を厚さ30ミリくらいに挽いて1年ほど外で乾かす。その後倉庫にしまって在庫している。
仕事が出れば建具屋に支給したり手持ちの材料を使ったりする。家具も裏板に至るまで全て無垢材になる。最近は杉板を3枚接ぎ合わせたJパネルを使うことがある。CIMG2831

杉材の建具は節のない柾目に限る。暖房の効いた住宅が増えて十分に乾燥しないと狂う。
製材所でも杉の丸太の良いのが出ると一番先に建具屋に売る。次が大工と言う程で最良品のを使っている。
当社でも良い丸太は建具用に採り次が柱、内法材になる。樹齢7,80年以上でないと難しい。丸太購入、製材乾燥と資金も掛かるのでフラッシュが増えてしまった。

建具屋の職人は細かい仕事なので器用で真面目なのが多い。手より口が先走るタイプには向かない。
デザインの打ち合わせでも細かいところを気にして思い切ったことをやりたがらない。そう言うところがデザイン優先の設計などに使われない原因だ。
もちろんだが安く出来る訳ではないので住宅会社にも敬遠される。既製品ではできないのだけを細々とやっている。CIMG3696

当社は左官と建具は付き合いが長くなる傾向がある。あちこち選べないのと真面目に付き合うので浮気が少ない。
逆に大工は昔は元請けだったのもあって口手八丁も多く駆け引きにも長けている。新らしい取引先の開拓も熱心で付き合いが増える。
新らしい職種の電気屋、クロス屋、水道屋などは最初から住宅会社と付き合うので営業感覚がある。そう言う意味でも左官建具は古臭い職種だと言える。

似たような職種に箪笥屋がある。ほぼ絶滅した手作り箪笥だが一部のブランド品だけが製作されている。
こちらも建具屋と似たような仕事をしている。塗り屋と呼ばれる家具塗装専門の業者もある。建具や家具を持ち込んで塗装してもらう。ウレタン塗装はシンナーを使うので体に悪いので外注するのもいる。
当地では無くなったが建具家具の金物専門の業者がいた。ネットや通信販売に置き換わった。DSC_3839

意外とこだわる方が多い塗装だがウレタン塗装が一番多い。シンナーを使うので乾燥が早いが職人は体に悪い。
水性ウレタンが増えたが乾燥に時間がかかってコストが上がる。当社ではニスを使うが仕上げが粗くて綺麗でない。
柿渋とか自然塗料にこだわる方もいる。コストを無視すれば漆が一番だ。耐久性もあるし日焼けや水に強いし何より深みのある味わいは別格だ。

当社では無垢の建具以外は使わない。コストもあるので出来るだけデザインは簡素にしている。
本襖や襖紙などに凝って絹しけや高級和紙もやったことがある。建具デザインだけで無く付属品にこだわればキリがない。
そしてネットなどで調べると骨董品などの古建具も手に入る。どうしても建具に凝ると和風で古臭い家ができる。ポリシーとして普通の家つくりでも無垢の建具で作る。


職人の世界—–左官屋

文字の変換で”さかん”と入力すると盛んと出てくる。”さかん”は左官のことだと思っているのは業界人だけらしい。
伝統的な家を建てるには必要な職人は大工、左官、建具と言われる。プレカット時代になって廃れてコテを握らない職人が増えても内外の仕上げは板張りか左官しかない。
30年ほど前はモルタル仕上げが外壁の主流だった。内部も大昔は漆喰で風呂などもタイル貼りだった。カマドとかコンクリート流しとか左官で作る設備も多かった。

職人は時代によって流行り廃りがある。左官と建具が最たるもので全て建材に変わってしまった。
その左官の最後に残った住宅仕事は玄関のタイル貼りだけになった。
当社は内外漆喰とか玄関土間を三和土で土で仕上げたりする。竹小舞を組んで土壁を塗り漆喰仕上げもほぼやることが無くなった。
時間と金額が住宅に使えるシロモノでなくなった。かろうじて外部にモルタルリシン掻き落としとか希望されることがある。s6

大工同様こちらも高齢化が進み休憩で話しているとそのまま老人クラブになってしまう。70代もまだ現役がいて60代とペアを組んだりする。
コテはともかく持ち運びができなくなる。重いモルタルの入ったバケツを二階まで何往復もする。漆喰など仕上げは厚さ0.2ミリとかの世界になる。
しばらくやらないとコテを持つ手が震えてできなくなると言う。頼んでいる左官屋は職人が4人いるが仕上げができるのは一人だ。下塗り、中塗りまでは良いとして上塗りは難しい。

珪藻土とか石灰クリームなども塗り要領は漆喰と同じだ。乾きの速さや塗りの滑らかさに多少違いはある。手間賃がほとんどなので種類が変わっても金額は違わない。土佐漆喰とかテカテカにする大津磨きはできる職人が少ない。
今でも田舎では土蔵の修理とかあって職人が3年がかりで足場を組みやることがある。新築住宅ではやらないがそう言う技術がないとできない。学校を出て修行をして一人前になっても激減した仕事では食っていけない。s3

土間のある家は最近増えている。土間と言っても殆どコンクリートにタイルかモルタル仕上げだ。
古民家風とかで玄関土間を土の土間にする方がいる。京都の聚楽土とか昔からの材料も販売されていて施工も簡単だ。湿らせて木槌で叩き締める。
叩きはこれから来ているが叩くほどに水が出て強く固まる。地元産にこだわればゴロダと呼ばれる土に石灰と苦汁と粉炭を混ぜて作る。昔の農家の土間などはこれで割れが入りやすく乾くと埃になる。

漆喰の仕上げ方も職人により多少の違いがある。
材料も違うが仕上げてから半乾き状態でコテでシゴく。シゴくことで割れ防止のスサと呼ばれる毛を寝かせるのと定着させて剥がれにくくする。クリーム状の一発仕上げの漆喰だとシゴきがない。
シゴいた方が良いのだがシゴいた跡がテカリとなって出てくる。施主によっては気にする方も多くクリーム状が増えた。漆喰仕上げは調湿とか効果があるが一番は吸臭だろう。s2

息子が新築してから孫が保育圏で木の匂いがすると言われる。過去に建てた方にも何人か言われた。
生活臭が漆喰に吸臭されて柱などに触った木の匂いがする。帰宅した御主人が木の匂いでホッとすると言われる。建材や生活臭がしないので余計木の匂いがするのだろう。
これが和紙とかの仕上げだと違った匂いになる。漆喰と木の仕上げは最高の組み合わせと思っている。

外部モルタルが建材に変わったのは断熱材の関係もある。
外断熱だと柱の外側に重いモルタルを張り付ける。経年変化でタレ下がったりする心配がある。
基準法では厚さは20ミリ以上と決められているので建材よりも重い。
真壁仕上げも充填断熱が壁厚が少なくて難しい。余計外断熱仕様になるから外壁も出来るだけ薄くしたい。となると薄く軽い18ミリのサイディングになってしまう。地震などで亀裂も細かく別れるサイディングの方がモルタルより入りにくい。s5

玄関タイルだけとなった左官工事も土壁や石貼りなどバラエティーに富んだ仕上げができる。マキストーブの遮熱壁やハーフユニットを使った浴室なども左官やタイルで作れる、バラエティーと言う意味では左官は色々な技術を持っている。
個性的な家つくりには欠かせない業種だろう。ただ後継職人がいないのは大工よりも大変かもしれない。


職人の世界—–大工

ブログとは別に日々の仕事の中で付き合った職人のあれこれを気ままに書いていきたい。
不定期になるので思いついたら書くことにする。

先ず一発目は一番付き合いが多く、当社の出来を左右しやすい大工だ。家を建てると現場に一番長くいるのが大工だ。刻みから始まって完成までとなると4ヶ月程になる。当社の売りである手刻みや真壁は大工の腕に左右される。次に材料と言ったところだ。1

当社は息子が棟梁をしている。普段いる大工の中で一番若い。秋田の宮大工のところで修業した。角館に7年程いて帰ってきた。
とりあえず当社の仕事をしていた大工のところに預けた。作業場を作った時から息子が墨付けをして棟梁になった。
立場が逆転して親方は息子に使われることになった。アドバイザー兼任と言うところだ。

大工は家大工と宮大工に分かれる。修業も別で道具から仕事のペースまで何もかも違う。
宮大工はできたもので判断され家大工は早くできることに重点を置く。だから宮大工は仕事が丁寧で遅い。材料に対するワガママも強く複雑な仕口とかやりたがる。
家大工は一現場いくらで請負うから早くないと赤字になる。5

後存知のように家はプレカット全盛で早さが絶対的な価値を持つ。建材も早さを追求しているからなおスピードアップする。
それに対応した大工が中心の家大工は技術より体力だ。宮大工は腕と知識がモノを言う。
主力が今でも60代が多い大工の中にはそう言ったスピードを好まないのもいる。大工は腕だと信じているのも僅かだがいる。

大工は基本的に日当制で交通費も道具代も自分持ちである。
最近は会社組織に雇われてサラリーマンが増えた。保険などをかけてもらっているので自由にあちこち移れない。
もちろん仕事も選べないので一匹狼を好むのもいる。腕に自信がある者程そう言う傾向がある。6

大工は数えきれなほど付き合ってきた。
選ぶ基準は腕を一番重視する。持っている道具を見るとある程度わかる。カンナとかノミとかプレカットでは無用の長物だ。
当社の現場では昼休みに一斉に大工がノミを研ぐ。若い大工には研ぐ修業をしたことがないのも増えた。

プレカットだと組み立てるだけなので自分で作ることがない。
手刻みは仕口はもちろん材の使い方まで大工が考える。たとえ設計者であっても細かく指示することはない。
真壁の仕上げだと材の良し悪しや太さは重要だ。私は選んだ材木を見て仕口まで口を挟んでいる。知識がないのに口を挟めば喧嘩になるか無視される。
逆にこちらの指示にも関わらずレベルを超えた仕事をすることもある。3

一般に職人は設計者とか施主の知識レベルを超えた技術を持っている。プレカットでは役に立たずとも手刻みでは有用だ。
完成後ではわからなくても手間をかけて狂ったりしないような仕事をする。かけ過ぎにならないように設計者としては注意しながら現場を見る必要がある。
近頃ではかけ過ぎどころかちゃんとやれないのが増えて苦労する。

私と同年代が多い大工だが引退間近が大勢いる。あと2,3年で大工不足は確実に来る。
在来工法の手間のかかる現場はやれなくなることも予想される。
大手の住宅会社は自前の大工養成機関を持っている。地場の住宅会社などは競争に勝てなくなる。
元請けをできなくなった工務店は下請け専門になる。当社も大工を増やすことは難しいと思っている。2

大手は上棟式とか省略するが職人たちは迷信深いのが多い。
不幸ごとがあれば縁起を担いで一月ほど休むとか現場管理に支障を来す。逆柱とか現場にはやってはいけない決まりがある。
施主が気にしなくても大工は嫌がる。当社では廃れる決まり事も分かる範囲内でやるようにしている。
ベテラン大工が知っていることでも息子が知らないこともある。いずれやらなくなることは仕方がないことではある。

そう遠くない将来に手刻みとか真壁は消滅することになる。神社仏閣でもプレカットが主流になる時代が来る。
そういう時代でも大工は必要だし技術もある程度残る。TVなどで伝統の技とかノスタルジーを込めて話題になる。しかし成り手が減って教える方もいなくなったら技術は廃れる。
一般庶民には手の出ない数奇屋とか超高級住宅のみになってしまう。当社は普通の住宅を近場の木で建てたいと思っている。限界に挑戦するようにできるまで続けたい。


こだわった家つくり

午後になって雨が降り出し梅雨らしい天気。午前中は事務所で見積など。
午後リフォームの現場へ戻って見積。来社もなくノンビリした一日。
昨日は公務員になった娘が鰻を買ってきた。そういえばボーナスの時期だ。
自営になって27年、すっかりボーナスを忘れていた。今後も縁がなく借り入れを返すまで現役で頑張る。

HPも作り替えて1週間。特別増えたとか変わったとかはない。
古いブログページも閉鎖していないので毎日来訪者がある。移転のお知らせは出してある。
私のブログはどちらかと言うと文章が主体だ。よそのブログは写真が多い。
自分の思いとか日々の考えたことなどを書く。だから少々古臭く主張が強い。

この頃は過激なことは書かないようにしている。別に論争をしたり揉め事は望まない。
仕事をやっていく上でこう考えてとかこだわっているとかを書きたい。人様から見ればともかく自分ではこだわった家を作っていきたい。
仕事がなくてもプレカットやビニールクロスには手を出したくない。他所の下請けとか仲間うちの廻しの仕事もしない。
あくまで施主の顔の見える仕事しかやらない。言うは易しで仕事が切れたりするとシンドイのだが。DSC_4180


有料か無料か

午前中は会計事務所の来訪。伝票整理と税金とかの支払い、申請等。
伝票も少なく会計処理はすぐ終わる。その後担当者と雑談など。
施主の傾向とか打ち合わせの仕方、図面代などの料金とか当方だけでは判断しにくいことなどを聞く。
専門家の意見と言うより一施主として見た場合の対応だ。私一人の考えでなく広く意見を聞いた。

昨日もHPの制作者と今後の打ち合わせをした。とりあえず完成はしたものの変更や改善はある。
今後も大きな変更には依頼しないとできない。日々の変更は自分でできるが限界はある。
増え続ける依頼者の対応が話題になった。今までは打ち合わせ後見積もりまで無料としていた。
打ち合わせ図面と簡単な見積もりまでは無料だが本格的な見積や図面は有料だ。

簡単な申し込みをしていただき請負契約時に申込金も契約金の一部にする。申し込み後のキャンセルは図面代と見積料はいただく。
依頼者も有料なものと無料のものははっきりさせたい。打ち合わせ図面はイメージなので簡単だ。
見積の図面は枚数も多く複雑だ。それを元にした見積は工事金額に忠実だ。
増えてくる客の要望は様々で金額を知りたいとかイメージを掴むためとかだ。有料、無料は重要だが今までが曖昧だったということだ。
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