仕事でお会いした方は何人になるのだろうか。見学会や直接事務所へお越しいただいた方など数えきれない。見学会などは一度に何十人にもなるし全部にしたら何百人になるのだろう。どちらかと言えば人に会うのが苦手なのにすごい数だなと思う。
木の家つくりを始めた頃とその前では客層が少し違っている。前は友達とか親戚、同級生など旧知が多かった。その後は文字通り木の家つくりがメインで見学会や広告での方が多い。多少オーバーラップはするが明らかに別なのだ。これからも木の家つくりしかないので、まだお会いしたことがない方が増えるだろう。
思うのは木の家と言っても受け取り方はかなり違う。私などは本格的な真壁の漆喰で田舎風とかとにかく木がメインの家と思い込んでいる。最近は仕上げのイメージが強く構造材とか真壁のイメージはあまりない。プレカットにプラスターボードの大壁で仕上げが板張りなら木の家なのだ。
何度も書くように家は構造材ありきで仕上げは従と思うのだが、仕上げが全てでそれがデザインと思う方もいる。最初は自然素材とか木の家とかイメージしていると途中から集成材のカウンターとか少しずつイメージが違ってくる。
違和感を感じるのは私だけでなく、二度三度会うごとにイメージが離れていく。今までで一番多いパターンである。私的には本格的な木の家つくりを希望していると勝手に思うから中途半端な終わり方になる。
設計も請負も商売なのだから契約できないと話にならない。業者と打ち合わせるといつもこの事に注文を付けられる。簡単に言うと施主に合わせてなりなりに妥協しろと言うことだ。妥協でなければすり合わせて契約に至るようにと言うことだ。
あまり生真面目すぎるとか杓子定規すぎると言われることがある。自分の思い込みが強く施主の意向を察していないのではとも思うこともある。その反面自分の信念に反しておかしいと思うことができるのか。信念を貫いた結果、選ぶのは施主であるとするか。
サラリーマン時代には営業会議では目標達成に向けて自分の意見を述べる。いつも出来そうもないことを言うのもいて自分には言えないと思った。自営になり売り上げは大事だからそうもいかないのもわかる。
子供達が小学校に入ったころ家族でスイスに遊びに行ったことがある。妹夫婦が転勤でスイスにいたからだがいわゆる観光コースではなく自分たちで歩き回った。道に迷ったり英語が通じなくて鉄道に乗れなかったり色々な経験をした。普通のアパートに住んでいたので住宅事情もわかる。
スイスの住宅は借り物が多く土地は借りて建物だけ建てる。貴族とか大地主がいて全域を所有しているからだ。規制が厳しく屋根とか外壁は色や仕様が決められている。防火も厳しく木造に見えてもコンクリートの上に板を貼っている。テレビなどで見るあの調和の取れた風景は規制によって作られる。
もちろん古い建物も残っているので勝手に改装とか壊すことができない。環境規制も厳しいのでマキストーブとかガス器具もご法度だ。電気の床暖房や温水器になっている。コンクリートないしは石作りなので内部は板を貼ったり漆喰になっている。
デザインはインテリアデザインが多くて家具やカーテン類が主だ。日本のように外観から屋根の色まですべて自由となると選ぶ方も大変だ。スイスは外壁の素材も決められるので似たような感じにしかできない。建材のような仕上げ方は内部しかできない。
中国とか東アジアが世界の注目を浴びるとその文化も世界へ普及する。日本の食文化とかアニメなどオタク文化は世界で通用する。家の建て方も通用するかもしれない。少なくとも建築家は世界で活躍する方が増えた。アメリカでは日本家屋が富裕層に受けている。
ヨーロッパなどの規制一辺倒の統一とは逆に個性的で自由な統一感のない日本式がアジアでは受けている。便器とかユニットバス、サッシ類などの機器から始まって外壁材とかビニールクロスなどが普及するかもしれない。安く簡単にイメージを変えることができるからだ。
これからの家の建て方も世界の動きと連動していくかもしれない。建材などの産業は日本だけを相手にできなくなって機器から海外を目指す。規制などの基準も世界に合わせていくようになる。それに連れてデザインも大きく変わっていく。
建築技術や設備関係は世界的な評価は高い。住宅も世界に通用するものがこれから開発されるだろう。製造規格が世界向けになり日本の規格も変わることだろう。デザインの考え方も変わるからいつまでも過去に囚われないないようにしないといけない。施主もドンドン変わっていくので経験だけにしがみ付くと遅れていく。