青森県八戸市の一級建築事務所 建築組 パックス有限会社

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割れる木

午前中は天気も良く穏やかで現場は塗装工事も入る。午後から材料を運び作業場で大工と打ち合わせ。午後は気温が下がり雪もちらつくが塗装は完了した。内部は床工事が進み来週から壁工事に入る。 
 
作業場は製材所の倉庫を借りている。だから在庫も一部は製材所に置いてある。屋根だけかかって風が吹きさらしの倉庫だ。木の乾燥には最適で乾きすぎて割れる恐れもある。昨秋に伐った曲がりがバリバリに割れている。 
 
広葉樹のそれも曲がりは割れやすい条件が揃っている。木は外周部に生きている白太の部分がある。ここだけで水が上がるのだが中心部は死んだような状態になっている。 
 
乾燥には白太の部分の縮みが大きいので割れやすい。逆に白太の部分を取って製材すると狂いもなく安定している。白太を残す製材、曲がりは全てそうなるが割れが強烈に入る。皮がついたまま何年も放置してから製材する。 
 
樹種によっても違いが大きくてナラとかケヤキとか硬い木は割れる。逆にシナとか朴など柔らかい木は割れにくい。しかし使う場合は硬い木ほど目も出るし美しい。柔らかい木は目もはっきりせず光沢もない。 
 
どの木でもそれなりに使い道はあって薪にしたり捨てるのはあまりない。一度割れてしまった曲がりを埋木もせずに使ったら自然で良いと褒められたことがあった。職人や業界の常識だけでなく人それぞれ好みは違うものだ。 
 
もちろん見た目だけでなく強度にも影響するのであまり割れたのは使わない。古民家の解体で出た古材は割れた材木が多い。長期の乾燥で品質も安定するし良いのだが途中にほぞ穴がついたのも多い。そのままで強度不足になってしまう恐れもある。


伐採時期

今日は朝から配達やら山行きで忙しい。現場へ配達後に製材所と山へ木を見にいく。さすがに山は雪が多い。エンコするのではと思うほど深い。樹齢90年クラスの杉と赤松。赤松は伐採時期としてはやや遅いかもしれない。 
 
伐採は水が上がらない時期に伐る。10月末ごろから1月までがその時期に当たる。2月に入るともう木は春の準備で水が上がってくる。3月に入ると本格的になり伐採すると水が噴水のように出てくる。 
 
赤松は乾燥が難しい木でカビやすい。伐採期を厳守しないと製材後でもカビてくる。だから今の時期は赤松は買えない。杉も同じなのだがカビることはないから買えないことはない。 
 
山冬の真っ盛りでも木は確実に春の準備に入っている。もっとも伐採期にこだわらないのが増えて年中伐るようになった。用途が建築ではなくベニア用とかチップではあまり関係ない。 
 
建築用材も杉はほとんど気にしなくなった。在庫であるものは夏に伐ったものもある。すぐ製材し乾燥すれば問題ないからだ。十分な乾燥もなく半ナマの材木で家を建てた時代の名残のようなものだ。 
 
昔は自分の山から出して建てた。期間がかかるので伐採後すぐ製材し十分な乾燥もなく家を建てた。冬に伐って春に製材し夏にはもう建て始める。乾燥期間はほんの2,3ヶ月ぐらいだろう。 
 
当社は少なくとも製材は4寸7分(140センチ)に挽き最低半年以上してから4寸に落とす。欲を言えば1年置きたいのだが次々と在庫するので倉庫が満杯になる。現しで建てる真壁の家は乾燥が命で仕上がりを左右する。


働き続ける

昨夜の雪が凍って道路は滑る。材料の引き取りで午前中かかる。途中凍ったのが溶け始めてウィンドウが汚れる。当然積んで荷物も汚れる。シートをかぶせて運んだが少し汚れてしまった。午後は現場と材料の引き取り。 
 
高齢化社会への対応が様々ある中でいつまでも現役というのがある。定年後7年も経過した同級生は優雅な年金暮らしだ。私もサラリーマンならほぼ仕事もせず遊んでいたに違いない。自営の道を選んだからまだ働いている。 
 
サラリーマンで退職後にまともな仕事につけるものは少ない。大手の会社とか公務員とか現役時代が恵まれていた者ほどそのようだ。年金も多いのか趣味に旅行にと遊んでいる。 
 
意外と職人とか零細企業のサラリーマンなどは歳を取っても働いているのが多い。会社が人手不足なのか安月給だったのでカバーするために働いているのか。待遇も現役時代とあまり変わらない。 
 
これだけ人手不足なのに働かないのも変な気がする。現役時代に出世したり格好いい仕事の方には単純な仕事はお気に召さないのだろう。その点職人とか定年がない職業は体が続く限り働ける。 
 
現場では70歳もまだ現役で年金をもらいながら休みを取りながらではあるが働いている。職人不足の現場では貴重な戦力で当社のような昔風の仕事が多いから都合がいい。景気も悪くはないし仕事は増え続けるのでこれからも増えるに違いない。


良い仕事

2,3日前の寒さが和らぎ暖かく感じる。現場のゴミとかダンボールを積んで倉庫へ運ぶ。夕方自宅の薪が少なくなったので倉庫から運んだ。何年も前から製材の皮とか解体材を積み上げてあったのを秋に玉切りした。 
 
職人不足の問題があってこれから建てる方法が変わっていきそうだ。住宅会社は一度に何棟か着工しシートを被せてほって置く。大工を次々と投入し効率よく建てていく。途中で日程が狂ったりして空きが出ないようにするためだ。 
 
工程を管理して工期を短縮すると経費が省ける。材料と手間は値切るにも限度がある。空きをなくせば職人を半日単位であちこちへ廻せる。短縮で保険とか仮設電気、水道はては借りている駐車場代など間接経費を減らせる。 
 
建築現場は特に住宅などは無駄が多く空き時間も多い。メーカーはコストダウンも徹底しているが現場はまだまだだ。時間もルーズだし打ち合わせや資材発注もいい加減なところがある。 
 
建材は大工に発注数を数えさせるといつも余る。足りないと仕事が中途半端で次に移れない。余ったところで次の現場で使えば良いと思っている。余った材料は傷がつくし運ぶのもしまうのも大変だ。 
 
現場管理の極意は資材発注ができるかどうかだろう。一枚数千円はする板を2,3枚余せば昼飯代ぐらいは出てくる。そう思えば高いのだが職人は平気だ。道具バカにも通じるが根が大雑把なのが多い。 
 
良い仕事をするには材料も吟味したい。選びながらやりたいのだがあまりが出る。道具も今のもので間に合うのにより良い仕上げができると思い込む。彼らに合わせれば膨大な在庫が増え続けることになる。しかし良い仕上げのためには必要なことも事実だ。そこが悩ましい。


ウルサイ職人

連休も職人たちには関係がない。昨日今日と大工は3人体制で現場は進む。天井が終わると床になる。最後が壁で作り付けとか色々取り付けて終わる。現場からの催促があれば資材を発注したり配達したり。 
 
午前中はほぼ事務所で図面やら打ち合わせの資料作り。設計屋らしい仕事が続いて午後は現場監督に早変わりする。ずっとこんな調子でやってきた。後片付けや道具の収納場所もいつも同じところへ置く。 
 
電動工具が増えて現場は置き場もないほどだが持ち帰っても同じだ。棚に収納するのだが満杯で入れられない。床に置くと次々と奥に入らなくなる。現場が始まると空になるが終わると足の踏み場もない。 
 
工具メーカーもなかなか頭が良くて釘打ち一つでも何種類もある。それぞれサイズごとに機械も違う。釘の長さも各種あってそれ用の機械になっている。どうしてこんなに種類があるかと思うほどだ。 
 
道具は一度買うと取り替え需要がない。新型が出るたびに取り替えていたら道具代で破産する。だからメーカーは機能アップで目を惹きつける。見たら欲しくなるような新型を出してくる。大工たちは一服の時にお互いの機械の評判を聞いている。 
 
建材メーカーとタイアアップして専用機械を用意する。スピードアップと疲れない機械を出して新型の建材を売りつける。大工工賃は下がり続け新型の建材を使うたびに道具を替える。何の事は無い大工工賃分を建材と機械メーカーに取られるようなものだ。 
 
手刻みの場合も性能アップをしたカンナとか出るので取り替えたがる。昔から鑿カンナとか道具馬鹿と言われるのはいた。一般に道具にウルサイ職人は材料にもウルサイし設計者の言うことを聞きたがらない。今はおとなしく素直になってウルサイ職人が減ってしまったが。