青森県八戸市の一級建築事務所 建築組 パックス有限会社

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38歳で会社を辞めて設計事務所として開業をした。周りには遅すぎるとか向いていないとか散々言われたが何かに突き動かされたように開業をした。小学生となっていた子供たちのことを考えると躊躇もなかった訳ではない。

その時家内の一言で結論を出した。家内は公務員なので収入が減っても何とかなると。今思えば大変甘い気楽なスタートだった。とあれ私は自分の何か人と違うことをやってみたいと自営の道に入った。

ひたすら仕事をこなし支払いに苦労し家族にも苦労はかけた。何度かピンチがきても何とかクリアし親や親戚にも迷惑をかけた。苦労の連続は辞めるまで永遠に続くなんて夢にも思わなかった。

最初の10年は無我夢中の時期で進むべき道も何も考えなかった。少し慣れて余裕が生まれ、人と違うことをしたいと言う本来の目的を思い出した。大して深く考えた訳でなくこのままで良いのだろうか位の気持ちだった。CIMG1113

自分の考えたストーリーではなかったが国産材への道へ入った。プレカットと建材の家はどこか自分に合わないと思ったのだ。手刻みとか真壁つくりは当時はそれほど珍しくもなく大工たちも普通の仕事だった。材木も職人も苦労もなく集めることができた。

森林組合にいた親戚が強く国産材の家つくりを勧めた。何も知らない私に丸太から材木を製材して家を建てる方法を教えてくれた。国産材の危機感が森林組合を突き動かし近くにいた私をそそのかした。

とにかく人と違うやり方で仕事をしたいと言う自分の意思と一致して国産材化がスタートした。周りのおだてにも乗って丸太を買い製材して建てていく。トラックや作業場や展示場まで作った。膨大な資金のいることばかりだった。CIMG1182

サラリーマンは家を建てること以外に借り入れをすることはあまりない。自分がどのくらいの借り入れが可能なのか知らない方がほとんどだろう。年収の5,6倍とかそんなものだ。審査があって返せる安定した収入がないと借りられない。

事業資金の借り入れは将来の収入も加算されるので年収の何倍もできる。資金の使い道が何であるかが問題でそのリターンに貸してもらうことになる。連帯保証人を立て周りに迷惑をかけながら膨大な借り入れをしてきた。

金融機関は政府の不景気対策によって審査が緩かったり甘い時期がある。雨降りに傘を貸さないで晴れると傘を貸すという金融機関に振り回されながら借り続けた。誘いがあれば見合う事業を考えて甘い審査で借り入れる。CIMG1139

サラリーマンであれば考えたこともない金額を借りて返し続ける。家を何軒も建てることができる金額だった。親からの事業継続だったらありえないが自分だけの判断でできる自営なので簡単だった。返せる時はともかく売上が厳しい時は大変だった。思い出したくないが破産する瀬戸際が何度かあった。

その度に忽然と仕事が出てきて何とかなった。ついているだけなのに自分の戦略が正しいとか都合の良いように考えた。懲りもせずまた借り入れをして次の戦略を考える。資金に苦労しない時期と苦労した時期は圧倒的に苦労する方が多い。

現在でも借り入れはあるが新しい事業は年齢もあって無理だ。少しずつ返して事業を継続していかないとならない。同年代は定年で気楽に旅行をしたりするが私にはまだまだ無理だ。それどころか引退は考えていない。CIMG1148

こんなに苦労するのになぜ止めようとしないのか。財産を残したいとか社会的に認められたいとかあまり思わない。コンテストとか派手な世間受けの良いデザインとか思ったこともない。自然素材を使った健康住宅を欲しい方がいてその選択肢としてやっていければ良いと思っている。

単なる設計事務所を超えて山出しからこだわって他所でできないことをやる。山を見にったりトラックを運転して運んだりできることは自分でやっている。コストを下げるとか材料の選定をしたいと思うからだ。

他所の設計事務所では有り得ない仕事ぶりだが、変えようとか止めようとは思ったことがない。理由はそう言う仕事が好きだとしか言えない。単なる図面描きでなく材料から自分でこだわって家を建てたい。施主のために他所では絶対できない家つくりをしていきたい。借り入れで苦労しながら、そう言う仕事が好きだとしか言いようがない。