青森県八戸市の一級建築事務所 建築組 パックス有限会社

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大工の休み

大して気温が上がった訳でもないが日が出て暖かい。現場は大工が二人休んで息子だけ。遅れ気味なのに参ってしまう。大工は基本的には雇用関係にはない。息子は例外としてあくまで日毎に雇っているに過ぎない。だから気が向かないと休んだり他から応援を頼まれると来ない。 
 
サラリーマンならクビ問題だが大工の世界では当たり前のことだ。逆に怪我や病気で休んでも保証もない。まさに日給の世界だ。休むにあたって特に前もって言うこともない。前日にあすはこない…..で済む。 
 
お施主様は細かいところにも注意を払う方なので休むと理由を聞きたがる。こちらは返答に困ってしまう。同じ職人でも他の業種は定着率が高く勝手に休むとかはない。大工それも一匹狼を集める場合だけそうなる。月給制のところもあって仕事の有無に関わらず給料をもらえるところもある。 
 
今日は一階の例の桜フローリングを敷いている。土曜から3分の一ほどできた。桜それも国産桜なので硬さも目も中国産の西南サクラとは一味違う。色もピンクが濃く硬さも硬いような気がする。これが時間の経過で色が濃くなって飴色になって来る。 
 
今度の現場は板張りの面積が多く、今も増え続けている。お施主様の好みの問題だが以前は板を在庫して加工していた。今年から在庫を持っているところからその都度買っている。いつでもすぐ手に入るから資金繰りも助かる。しかも無節で値段も安い。 
 
加工の場合だと板が坪あたり5000円くらいで加工賃が3800円ほどかかる。乾燥する時間や持ち込みの運賃もかかる。できたものがすぐ手に入るならこちらの方が良い。必要なぶんだけ買えるからさらに助かる。在庫の羽目板は今度の現場で相当使ったのであまり残っていない。 
 
作った時は色々な木を加工したのであまりも様々あってポイントで使う場合は便利だった。在庫がないと決まったものしか使えない。ほとんど杉材になってしまう。面白いくて個性的なものを作ろうとすると色々金がかかると言うことだ。CIMG5864


桜の根っこ

朝早くから現場でお施主様と打ち合わせ。ご夫婦と娘さんがに来ていただき各自持分の確認。収納とかトイレは奥様、娘さんは自分の部屋。ご主人は全般、て言うか予算的なこと。とにかく希望を取り入れることが肝心なのだから聞かないとならない。家族みんながそれぞれの意見を持っているのだから。 
 
こだわりの大部分はご主人の木に対する部分だ。今日から一階の床を貼り始めた。私が在庫で持っていた桜の根っこのフローリングだ。ヤマサクラとか中国産の西南桜など各種の無垢材がある。どれも一般的な模様で当たり障りのない柄になっている。誰が買うかわからないから当然だが。 
 
私の桜は公園の伐採で出た根っこに近い部分だけの桜だ。普通は製材も難しいし歩留まりも悪いので誰もフローリングにしようとは思わない。ウネウネと模様が強く相当な癖がある。普通は手に入らないだろう。 
 

種類から言えば吉野桜だと思うがヤマ桜に比べやや柔らかい。公園の木だから横に伸ばして詰めているから短い。根っこの部分だけだから太いのは太かった。中心が腐っているのも多く製材の歩留まりは非常に悪かった。つまり高くついた。 
 
今回の現場が決まって最初に思いついたのが桜だった。この現場こそ似合うと強引にお施主様を口説いた。いや口説くまでもなく快諾してもらった。今後月日が経って赤みを帯びた桜のフローリングは硬くて傷がつかないし宝物のようになるに違いない。もちろんこの世に二つとないものでもある。 
  
大黒柱や曲がりの梁も貴重なものだ。しかしどこかで見ることがあるものではある。予算さえかければ誰でも似たようなものは造れる。このフローリングは二度と作れないから価値は断然上だ。 
 
そう思ってくれそうな施主が出たら使おうと3年近く積んでおいた。置き過ぎて腐りかかったのもあって歩留まりが落ちて損をした。そのぶん価値があってそれを面白いと思ってくれたら本望だ。これからは加工屋もないし在庫することもないのだから。CIMG5873


床貼り

いくらか気温が下がり晴れても寒い。現場は大工と電気が入っていつも通り。午前中は現場で打ち合わせをした。大工にはフローリングの貼り方に不備がありやり直す。電気工事は二階の配線工事が終了し壁を張れるようになった。 
 
一階は床貼りの準備の柱等の欠き取りをした。これはフローリングを貼っていくと柱のところで突きつけになて隙間が空く。柱を少し削って入れ込むようにする。真壁の場合は常識なのだが大壁だとボードを張って隠すのでいらない。 
 
前にも書いたようにボードを張る時も巾木に差し込むように貼る。大壁だと柱の上にボードを張ってから巾木をペタンとはる。簡単なのだが後で床の歪みで隙間が出てしまう。高気密住宅などでは隙間風になるのでコーキングをしたりする。 
 
先付けの巾木は床に直接ビス留めするから隙間が開かない。材料と手間がかかるが長い目で見ればしっかりした家になる。無垢材のフローリングはほとんどの場合下地を作って貼る。床垂木に留めたのは昔の話で床の剛性を高める意味もあってネダレスが普及した。 
 
ネットでネダレス合板は床垂木より弱いのではと言うのがあった。単純に上からの荷重を支える意味では正しいが水平荷重には弱い。無垢材のフローリングを使用すると普通は繋いであるユニ方式なので途中に継ぎ目が出る。継ぎ目は一定のところではなくランダムだ。 
 
となるとどこで弱い継ぎ目が来るかわからないから合板下地の方が良い。以前にどうしても合板下地が嫌だと言うお施主様がいて床垂木を15センチピッチで入れたことがあった。それにしても継ぎ目が垂木の上に来ないところが出てしまう。 
 
同じ無垢でも繋がないフローリングなら問題ない。しかし針葉樹なら良いとして広葉樹はそんな長い材料は取れない。結局は繋ぐよりないので下地が合板が有利だ。昔は床材はマツとか杉などを板にして敷くのが当たり前だった。 
 
仕上げ材として木目の綺麗な広葉樹を使うようになってきた。2mとか長く一枚板を取れない広葉樹は繋ぐよりない。繋がないものは多分宝石のような金額になるに違いない。昔の豪邸などで桜の一枚板のフローリングを使うのを見たことがある。一個人の住宅には到底ありえないことになってしまった。CIMG5794


逃げ出す大工

昨日よりも気温が上がり時折小雨が降る。現場も外部が終わって内部の仕上げになる。これからは毎日が気が抜けなくなる。仕上げのために下地を入れたり張る材料を用意したりする。棚やパイプをつけるところは下地がないときでない。 
 
階段の手すりを少しつけたら息子は和室の床にかかる。何とも中途半端な気がするが職人は独特だ。合理的とは言えないタイプが多くて何を考えているかわからない時がある。聞けば単なる気まぐれとか多い。 
 
仕上げの状況によってはボードを張る前にやることがある。腰板を張るのか漆喰だけか板張りなのかによって違う入れ方をする。毎日のように打ち合わせをしないとだめだ。こまめに指示することが大事でうっかりミスは後でやり直しなので大変だ。 
 
大工は棟梁かどうかでやる仕事が決まっている。腕の問題でなく階段とか内法をつけるとか和室を作るとかは棟梁の仕事だ。他の大工はほぼ手を出さない。自分から志願してくるのもいない。どうしても追いつかな時にはやることもある。 
 
過去何組かの大工を使ってみていずれもそんな感じだった。年上とか年季が古いとかではない。肝心なところは棟梁の仕事って訳だ。応援とか使われている大工とかはそう言う立場にないからボード張りとか下地作りになる。 
 
お施主様は大工は似たような腕をしていると思っている。個人によってあってできるのにどうでもいい仕事ばかりやるのもいる。逆に出来もしないのに威張りたくて請け負うのもいて途中で投げ出したのもいた。選手交代なんて野球じゃあるまいし。 
 
手刻みとか現しの現場は思ったより難しい。やり慣れていないと時間ばかり過ぎて焦ってしまう。赤字になると分かればさっさ逃げ出してしまう。とんでもないことだが当社のような現場ではよくある。巷に溢れる大工たちも使い物にならないのが大勢いるってことだ。CIMG5859


アフター

今日は昨日よりは曇りがちだが暖かい。夕方にかけ気温が下がり雪になる。現場は今日でやっと外部工事が終了し明日から中のボード貼りになる。次は外部塗装で先日色をお施主様と決めてある。天気を見ながら塗っていく。終わればすぐ雨樋をつける。 
 
階段の手すりにかかる。たった手すりを1本つけただけで階段が生き生きしてくる。やはり階段は手すりや腰板で決まる。今回は欅だけで造る。赤松や栓、栗なども造ったことがある。欅の風格とか木目の美しさは格別だ。 
 
昔木の加工業者に欅が大好きと言うのがいた。当時わたしは木の家に取り掛かり始めであまり詳しくなかった。だから加工屋は木の師匠のような存在だった。木の種類や加工の仕方、クセ、価格や入手先まで何でも教えてもらった。 
 
付き合い始めて10年ほどで一端の木の家つくりの業者になった。建てるところまでは知識が溜まってもその後のアフターやトラブルまでは知らなかった。加工屋とてそこまでは知らないし知っていても言うはずがない。 
 
かくてわたしはアフターやクレームで難儀することになる。無垢材にこだわれば狂ったり割れるのは仕方がない。承知で始めたのだが建てるたびに増え続けるアフターが重荷になってくる。もちろん少しずつ建材や乾燥した材木を使うなど対策は練った。 
 
基本的には無垢材と漆喰の家だからどこかがおかしくなる。あるいはなる確率がプレカットなどに比べると格段に多い。肝心なのは施主様にそのことを納得した上で建てることだ。後で割れるかもしれないがどうするかと言うことだ。乾燥機に入れたりネットの出来合いを探したりする。 
 
ネットの出来合いは建材ではなく無垢材なのだがマイナー中小業者なので品質や追加などの融通が効かないとか不便さはある。サンプルを見るのだが実物が少し違うとかあった。やはり加工業者のような顔を見ながらの安心感はない。 
 
建材店なども無垢材のメーカーを扱い始めたり時代は無垢材にも便利になってきた。しかし加工業者に頼むような自由自在なこだわりはできなくなった。しかも業者の廃業が増えたきた。これからの木の家は以前に比べ格段に難しくなってくる。当社には木の家に必要な3要素のうち大工の技術だけは残っている。CIMG5852