青森県八戸市の一級建築事務所 建築組 パックス有限会社

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ケヤキの加工

昨日は打ち合わせと現場で帰りが遅くなった。で、ブログは日曜になった。今日も息子は作業場で少し仕事。明日は祭日だがもちろん休みなし。現場も朝7時からコンクリートの打設がある。現場も何かと忙しなくなってきた。 
 
曲がりの加工も終盤にかかり今週中くらいでできる。同時に柱などのサンダー掛けが始まる。塗装下地なのでカンナがけでなくサンダーをかける。その方が塗装のノリが良い。 
 
曲がりなどももちろんサンダーで仕上げるのだが最初はカンナがけをする。自動ガンナに通してからサンダーをかける。重いケヤキの曲がりを二人で持ち上げて機械に入れる。相当な重労働で腰を痛めたりする。つい2,3日前にも一人腰が痛いと休んだ。 
 
古民家風はリフトとカンナ盤がないと加工も仕上げも難しくなる。人の手では持ち上げれない梁材を加工するだけで何日もかかる。杉の平梁だったら1日はおろか何本も加工できる。柔らかいから加工も早いしサンダーも早い。 
 
曲がりや大黒は1本入るだけで大工が何日もかかってしまう。今回のように8本も入るとすごいことになる。固いケヤキなどの加工は手慣れた者でないと手も足もでない。硬くて仕口なども時間がかかるし第一複雑なものになりがちだから余計時間がかかる。 
 
宮大工とか一部の大工でないと加工することもないから覚えるチャンスがない。簡単に大黒とか曲がりと言っても誰でもとはいかない。しかも手早く要領良くやるにはかなりの腕になる。何事も経験が大事で割れたりしないよう小口にボンドを塗ったり知識もないとできない。 
 
様々な道具を駆使して固いケヤキを時間を掛けて加工する。丸ノコと電ドルだけの現場しか知らない大工には別世界で知らないのが普通だ。応援に来てもらって初めて見たなんてのもいる。もちろんどうやって加工するか知る由もないだろう。
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一人親方

今日も昨日に続き大工は上の製材所を借りて曲がりの組み付け。現場では土留めの型枠が続きます。土工の応援に旧知の大工が来ました。4年前に当社で息子と働いたことがあります。基礎屋とも知り合いでたまに応援に来ているようです。 
 
大工に限らず職人は勝手気ままに働く場所を変えます。常用ではない彼らは基本的には個人経営者、通称一人親方です。自分で保険をかけ日当以外にもらえませんが自由に移ります。フーテンの寅ではないですが風の吹くまま気の向くままです。 
 
言うほど自由勝手にはいかないでしょうが縛られることもなさそうです。現場の怪我は労災ですが道具とか通勤の車とガソリンは自分持ちです。国民健康保険と国民年金で何でも自己責任です。手間賃は常用よりは高いのですが自腹分を考えたら損かもしれません。 
 
今息子と働いている大工も初めて会ったのは3年前です。秋田で修行した息子は仲間がいません。たまたま私が使っていた大工と一緒に働いてその仲間にいました。仲間と別れて息子と組むようになり当社の仕事がないときは彼が仕事を見つけて来ます。 
 
離散集合が激しくすぐ仲間割れをしたり復活したりと目まぐるしく変化します。ここ2,3年は息子と組むことが多く当社の現場があれば息子と一緒に来ます。 
 
以前は現場ごとの契約で親方以外は誰が来るのかわからない状態でした。とんでもない話ですが朝現場にいるメンバーが誰なのかわからない時もありました。親方が1日2日の応援を連れて来るからです。 
 
手刻みとかの現場を嫌うのもいるので今のような息子を中心にメンバーが固定してくれると助かります。当社の仕事が切れる時には息子はよそで働くことになります。こちらも余計な仕事探しも必要ないし好都合です。


ラフな作り

土留めの型枠もついて明日は生コンの打設。来週初めに型枠を剥がして埋めもどしたら完成です。その後浄化槽の設置があって遣り方を出します。大工が現場で墨出しと高さを出します。 
 
作業場では曲がりの加工中なのですが曲がり同士の交差が始まります。現物同士をくっつけて仕口で固めます。交差したところが動かないようにかみ合わせるわけです。これがなかなか難儀で現物同士を組むしかないのです。 
 
この組み方の噛み合わせがどのくらいになるかで梁の高さが決まります。柱にぶつかる部分の高さとか上に立てる束の位置が決まります。水平の梁だったら考えなくて分かりますが曲がりそれも曲がり同士の組み立ては大変です。噛み合わせ部分の寸法とか組んでみないとわからない訳です。 
 
本当のことを言うとすっかり寸歩を決めても上棟までの間に曲がりは捻れたり曲がります。風に当てただけで割れるくらいですから組む時に入らなくなります。大工の頭には余裕を見るという感覚がありませんからキッチリと組み付けます。 
 
何度も余裕を見るように言うのですがラフな作りなんて思いつかない彼らはいつもキッチリやってしまいます。今日も息子に何度も言ったのですが1ミリの隙間も開けません。上棟時には隙間が空くのだから噛み合わせを浅くラフに作れとしつこく言いました。多分聞かないでしょうけど。
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大工の技術

大黒や梁の加工は今日も続く。作業場では曲がり同士の交差する刻みが進行中だ。レベルの位置から曲がり具合の寸法を出したり相当難しい。職人たちは自分のイメージで高さや深さを決める。設計者としてのこちらのイメージと食い違うこともままある。 
 
こんな時は無理な押し付けでなく妥協点を見つけたり別な方法を模索する。経験を経ると大工の考えていることがわかってくる。大工には知識と技術という点でプライドがある。 
 
完成イメージよりも工事しやすさに重点をくのは止むをえない。実際に工事するのは彼らだしトラブルも自分たちに来る。技術は時として工事のしやすさが進化の素になる場合がある。必ずしも出来上がりイメージ優先ではない。 
 
逆に彼らの持つ知識や技術にはこちらの意図を超えるものがある。時に間違って作ったものが意図するよりも素晴らしいこともある。それがわかると大工たちの意見は設計者の技術向上のために大きな要素を持つ。 
 
古民家を見ると現代の建築技術が忘れているものがある。基準法では認められないことでも長年の経験で有効な方法である場合もある。それを認めるか否かは設計者の判断だろう。 
 
作業場で大工たちと打ち合わせを重ねるとお互いの意図がわかって来る。こちらのつまらない意図が技術的に難しいことはよくある。逆に大工が端折ったことが大きなイメージダウンにつながる例もあった。大事なことは現場でよくコミュニケーションをとることだろう。 
 
何度も大工の技術に期待を超えた仕事を見てきた。持っている技術を遺憾なく発揮できるようなやり方は取っている。設計者半分大工半分くらいになるととても面白い家つくりになる。なんとかそういう環境を作りたいと思っている。
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栗の大黒

午前中は作業場でお施主様も立ち会って材料の選定。何でも自分で確認しないと気が済まない方なのです。大工は大黒柱の加工で腐りかかったところはボンドで補修です。樹齢は100年を超えているのをお施主様が確認しました。 
 
栗とかカラマツは5,60年を超えると自分で中心から腐ってくるのがあります。樹齢100年の栗は珍しい方です。広葉樹は一般的に横に広がる傾向があるので枝の部分から腐って倒れたりします。意外と長齢樹は少ないものです。 
 
大黒柱として使われる木は欅、栓など多くて栗は少数派です。理由としては長樹齢の木が少ないのとまっすぐなのがないからです。だからこの栗を見た時にすぐ購入を決めました。製材してさらに目の細やかさを確認できました。 
 
ただ残念なことに枝からの腐れが何箇所あって気にする方には向いていません。結局10年もの歳月が経ってやっと陽の目を見たわけです。木の好きな方で迫力のある古民家を希望する方に使ってもらおうと思っていたのです。 
 
今回はただ太いだけでなく変わった目や樹齢を気にってもらって決まったわけです。節や割れがないだけなら他にあったのですが栗の迫力と私の熱心な押しが決め手だったようです。この栗があって欅の曲がりがバランスよく収まる気がします。
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