青森県八戸市の一級建築事務所 建築組 パックス有限会社

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高齢者の仕事

ほぼ一日冷たい雨が降りしきる。こう言う日は気が滅入りがちだ。何となくスッキリしないからだ。午前中は図面や伝票整理。午後から作業場へ。 
 
刻みは順調だが解体や基礎工事が遅れ気味だ。職人たちに聞くと不景気とは言いながら仕事が重なって忙しい。大工だって減っていることを考慮しても足りない。上棟後の人集めも苦労しそうだ。 
 
30年前は100万人いた大工が今や40万人。オリンピックの景気が復活すると深刻な職人不足になりそうだ。今後地方でもその傾向は続くだろう。 
 
地方では大工がまだ請負をするところがたくさんある。客は同年代が多いから70歳を過ぎるとぐんと元請けが減る。高齢化社会は建築の世界でも言えることで施主も大工も高齢者と言うのが出てくるかもしれない。 
 
私は60代で施主は50代が多い。今の仕事を続けると60代,70代の施主が主力の時代が来る。60代は親が90歳以上で生きているのも多い。相続がこれからと言うのもいる。 
 
私の親は生きていると90歳になる。公務員だったから年金が多いし貯金も私よりは多かった。これからの相続では90代の親に子が60代と言うケースが出てくる。高齢者のリフォームなどに相続で始まることもある。 
 
相続をした施主が60代で同世代の職人が仕事をするのもあり得る。老老介護とか高齢者同士の仕事のやり取りが増えるだろう。これは是非とも頑張って仕事を続けた方が有利だ。若年層がいなくてもまだまだ引退することもなさそうだ。


オトーサン

朝から雨で気温も低い。午前中は作業場で大工と打ち合わせ。今月と来月で刻みを終了させる予定だ。11月には上棟になるがまだまだ刻みは続く。上棟後は大工が4,5人必要と思っているがまだ目処がつかない。 
 
10年ほど前に建てた現場を見てからお施主様には決め手になった。それもあって応援の大工を前に建てた大工たちを呼ぶ予定だった。しかし急遽仕事が入り年内は難しくなった。お盆前には仕事がなくてと言うことだったからだ。 
 
職人たちは仕事が安定的に続くのは少ない。あまり早くても急すぎてもうまくいかない。当社のような仕事は好き嫌いがあって誰でもと言う訳にはいかない。道具も違うし来てもらっても仕事がない。 
 
予定していた組はブログの職人の世界に登場する大工だ。大工その2に登場するオトーサンのところだ。最初に曲がりとか大黒とか古民家に本格的にのめり込むきっかけになった。ほぼ10年ほど付き合いがなく久し振りの仕事になるはずだった。 
 
珍しくと言うか当時の大工たちがまだいると言うことだった。仕事の変化もあって長く同じ大工がいるとは限らない。気ままにあちこち渡り歩くのが普通だ。

オトーサンのところは大工が小学生の頃から住み込みで修業する。学校に通わせながら大工修業もする。今では聞くこともない昔の世界が生きている。だからオトーサンは単なる親方でなく親そのものだ。 
 
親が生きている限りは子はどこへもいかない。子と言ってももう50代になるし子もいる。オトーサンは正月にはお年玉は何人に配るのかしれない。そういう世界だから仕事ぶりもレトロで古臭くノンビリしている。 
 
新しい古民家と言うか合理的なものを考えて別な大工に乗り換えた。いろいろあって息子が大工となり縁が切れてしまった。息子以外の大工が安定しなくて応援にオトーサンのところを訪ねたわけだ。今回はダメだったがいずれまた一緒に建てる時がくるような気がする。cimg5037


栗の板材

朝から解体の現場へ。業者がのんびりと作業中でお施主様の手配なので当方は待つだけ。すぐ近くの製材所へ寄って栗の土台を引き取る。2年前から在庫で預けていたのだが邪魔なこともあり引き取ることにした。製材所は無料で土場を使わせて在庫を預かる。製材の予約みたいなものだがどこでもやっている。 
 
預けてあったのは栗の土台用の丸太10本ほど。ほとんど2m級で短く土台以外には使えない。4寸角と曲がり1本が出来た。同時に皮の部分から板材が取れた。丸太とは言え2年も置くと乾燥する。いい具合に乾燥し特に皮に近いところは乾いている。 
 
今度の現場の土台は別なところから買ったので使わない。栗の羽目板加工をしているので腰壁に使えるのがわかった。腰壁は巾木と上部の見切りが必要だ。これまで溜め込んだ栗の板材を加工に持って行ったので在庫がない。仕方ないので梁材を挽き割って作る予定でいた。 
 
ところが土台用にと挽いた板が意外と乾燥具合が良い。雨に当たらないところで立てて乾燥したら一月ほどで使えそうだ。思いがけなく出てきた板材がすぐ使える。これはとニンマリしてしまった。 
 
腰板は杉材などが多いが広葉樹である栗などの方が綺麗だ。やはり何でも堅木は加工して美しい。腰壁のポイントは上部の見切りと巾木が立派だと良くなる。板材部分ばかり気が入ってこれらの役モノを忘れる。言ってみれば端っこ部分の上下が見栄えのポイントになる。 
 
今度の現場は全て巾木は高さが4寸(12センチ)を使う。巾木は石膏ボードを張ってから上からペタンとつけるのが普通だ。昨今では板などではなく建材の紙を固めたようなもので作る。メリットは工事が簡単で安い。 
 
当社では原則として高さ4寸の奥行き1.5寸(4センチ)の板を床に固定しボードを溝に入れる。こうすると浮いたり凹んだりしないし床との隙間もない。かく言う私も最初にこのやり方を知った時は感動したものだ。こんなやり方があったのかと。 
 
手作りの家はまだ手間がかかるが後で狂いの来ないやり方がたくさんある。随時紹介していくがいずれも今では見ることのないやり方ばかりだ。丈夫さだけでなく美しさも別格なことも重要だ。材料とやれる大工が少なくて減っていることだ。
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金物

昨日は建築士の定期講習に行った。朝から始まって終わったら6時、一日がかりだ。例の姉歯事件以来厳しくなった建築士だが講習が増えて混乱する。定期講習は建築士事務所に務めるものは全員義務がある。個人の講習みたいなものだ。これとは別に設計事務所の管理建築士になると別の講習がある。管理建築士とは代表する建築士という意味だ。 
 
5年に一度の管理建築士講習、4年に一度の定期講習。建築士は永久資格なので違反でもしない限り資格は生きる。これまでは資格取得後のレベル維持のための義務はなかった。運転免許ですら書き換えがあるのに建築士は何もしなくても良かった。 
 
建築士のレベルアップのためには良いことだが面倒臭い。管理建築士講習だって一日がかりだ。講習がいつもあるようで忙しい。5年はすぐなのでいつも講習の心配をしなければならない。今回も本当は来年の三月までに受ければ良いのに3年と勘違いしてしまった。講習を受けてから1年を経過したら3年以内に受ける義務がある。 
 
役所用語のようで間違いやすいが4年に一回受けると言うことだ。なんでこんなにややこしい言い方なのか腹がたつ。法律用語とか分かりにくい言い方が多い。おかげで半年早く受けてしまった。来年で良かったのに。 

今日は朝から事務所で図面作成。いろいろあって壁量計算をやり直した。N値計算をやり直して金物の負担を減らした。真壁の家は壁が薄いので金物をダブルで入れるとはみ出してしまう。納まりがうまくいかないので大工たちと揉める。もちろんなくすことはできないのだがN値計算で種類を変えることはできる。 
 
太くて大きな梁を使うのでそれらの繋ぎは仕口で作るのだが検査が通らない。金物の検査があるからどんな場合でもつけることになる。45センチ以上の3間梁を組むのに金物だけで持つかどうかだ。もちろん基準法に則り工事するのは間違いない。構造計算はやらなくても良いことになっているが簡単な壁量計算くらいは完璧にしないとならない。 
 
当社の大工たちは金物を嫌うが法は法で守る義務がある。まして瑕疵担保保険や各種保険などは皆これらの金物に依っている。真壁の家は壁にダブルの筋外を入れにくい。いつも金物では苦労している。


木のマニア

午前中は事務所で図面や見積もり。午後から作業場で大梁の確認。どれを使うかとかどの面を向けるか…..。実は大工任せが多い中で私的には一番重要だと思っているのです。夕方になってお施主様を呼んであーでもないこーでもないと確認作業。 
 
普通はそこまで確認のために作業場までいらっしゃる方は珍しいんです。まあ好きだと言うことでしょう。だからこそ私を選んだのでしょう。3間もの大梁は普通使いません。山から出して乾燥するだけでもかなりの難問です。ケヤキとか赤松は時々見かけますが。 
 
お施主様は相当な木のマニアでもあり太い柱や梁を大好きです。だから刻みの段階でも相当な熱心さで見にいらっしゃいます。寸法や目の感じとか素人離れした好みです。こう言った木のマニアはよくいます。いますがそれを自宅にそれも金をかけて実現しようなんてのは珍しいです。 
 
加工をする大工たちは柾目の無節を好みます。加工しやすさと狂いの少なさでしょう。素人で節のある曲がりとか大黒を好む方は少数派です。しかも腐れや割れが大きく入ったりするのが多いので尚更です。完成後はかなり個性的で本格派になる予定です。
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