青森県八戸市の一級建築事務所 建築組 パックス有限会社

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設計の世界—–自分の木で建てる2

山から出すには使う量より多めに出さないとならない。丸太の価格が高い時は少なくて済むが今は最低に近い。採算ベースだけで考えたら大きなメリットはない。仮に伐らないで放置しても手入れも必要だしいずれ売る時が来る。その時の相場がどうなるかわからないが上がる予想は少ない。

毎日住む家がご先祖が植えたものだと思えばこれほど嬉しいことはない。何事もつながりが浅くなる現代で自分の子供を先祖の木の家で育てるのは意義があることだ。伐った山にはまた苗木から育てると孫世代に使えるようになる。

放置すればただの山林でも使うことで先祖とのつながりを持ち、木の家に住めば健康住宅になる。買うと予算的に厳しいことも内外に板張りが可能になるとか柱も4すんでも5寸でもまた天井も高くできる。できる限り製材して構造はもちろん仕上げにもフルに使えば個性的な家が出来上がる。DSC_4082

プレカットの家の木材使用量は極限まで減らして集成材を使う。集成材は初期強度は優れているが長期には貼り合わせの糊が寿命になる。初期強度が強いので柱も3.5寸が多く細くなる。仕口も浅くホゾも短いので金物で締め付けて保たせる。

自然素材と違い張り合わせの糊からシックハウスの原因となる物質が微量ではあるが出る。家全体であるから微量でも影響がある。さらに大壁と言って柱や梁を隠すのが一般的だから長期に渡り少しずつ発散する。仕上げに使うビニールクロスも糊と素材自体からも出る。

建材は基本的に化学製品であるから使用物質の制限がある。禁止されても替わる物質をすぐ開発するから無害になる訳ではない。メーカーはコスト最優先で利益を上げることが最終目的だから安全第一とは限らない。CIMG1707

自然素材住宅であっても建材を使わない家はコストがかかってしまう。バランスの問題で基本的には柱現しで漆喰などの吸湿や吸臭の機能を持った仕上げにしたい。板張りも柱を取った残りから板を製材し使える。できるだけ持っている資源を最大限に活用した作りにすれば健康にもコスト的にも有効になる。

柱、梁は現しにするためには目の良い節の少ない方が向いている。捻れや狂わないように良い丸太から取るのが基本である。良い丸太は価格も高く選んで買うと高くつく。自分の丸太であれば何本か良いのを選べば良い。挽く時も効率一本槍でなく良い目を出すような挽き方をする。こうすることで目の綺麗な無節の良い材料を現しにできる。

昔は良い材料を取るために山から出した。山持ちの一番の贅沢で資源の活用法だった。残念なことに製材所は廃業が相次ぎ材木を在庫するところもない。せっかく良い丸太を出しても並みの値段で取引され市場に出回らなくなった。今では自分で出して選ぶよりないのが現状である。DSC_4087

終戦後70年も経って50年以上の丸太が山に大量に蓄積されている。木は年数により間引きで間隔を開けている。放置林は太くなってお互いにぶつかり枝が枯れたり変形する。年数が来たら出すか間伐をしないとならない。山はいつも生きている。

木を出すには昔は山師と呼ばれるブローカーがいた。山主から買って出して売る商売だが丸太が売れなくなってしまった。代わりに森林組合などが伐採運搬をしてもらえるが製材はやらない。さらに手刻みをする大工がいなければ乾燥や保管ができない。これらの業者の手配や交渉を施主自身ができないので近年は滅多に行われなくなった。

当社はできるだけ自分の山の木で家を建ててもらいたいと思っている。伐採は運搬はもちろん製材や保管まですべてできる。経験のない者には難しい職人の手配や現場管理もノウハウがある。山主だけでなく市場で丸太を購入して製材するのでどのような材をとるかもわかる。これらを一貫してできるノウハウがある。DSC_4091


設計の世界—–自分の木で建てる

木造とは言いながら国産無垢材と大工の手刻みの家でなくなった。そのことに特に違和感もなく”そうなんだ”と言う方もいる。車で言えばタイヤが天然ゴムでなく合成品になっても走りに変わりがないのと同じだ。性能有りきで素材やましてや加工法には誰も関心がない。

最近の施主と業界の人間、特に年配者にはかなりの思い違いがあるようだ。山にある木を出して製材乾燥し大工が刻んで建てる当たり前のことが理解されていない。植林された木は樹齢50年を超え出番を待っている。その出番が集成材工場や紙の原料であるチップなのは普通になった。

木の家の要望は根強いものがあるが実態は仕上げ材としての木だ。見た目優先は”デザインが命”と言う言葉のように家電品の一部のような扱いだ。構造材としての無垢材の認識は車のタイヤのごとくで耐震性とか機能の面でしか評価されない。CIMG0832

古来家は近隣の木を伐採し大工が建ててきた。このリサイクルシステムにより里山は活用されて暮らしの一部になった。ところがこの近隣の木のリサイクルが壊れて放置や手入れ不足になった。木の値段が下がり売ろうにも採算が取れない。ましてや自分の家にも使われずじまいではどうしようもない。

杉は植林して10年くらいは下草を刈ったり間引きしたりする。大きくなればさらに間引きをして枝打ちをする。手入れのない山は曲がったり折れた枝で二股になったり価値が大きく下がってしまう。手入れ不足の山は密集し枯れるのも出て子孫を残そうと杉は花粉を大量に撒き散らす。

自分の木を出して建てたい方がいて山に行く。大概は樹齢が50年前後で出すには少し早い。もう20年もすれば銘木にもなろうと言うのが多い。山出しには原則があって樹齢と出すルートが必要だ。道路に面しているなら問題はないが他所の土地を通るには問題がある。CIMG0813

樹齢は生えている場所にもよるが最低50年は欲しい。枝が多く曲がったり割れたりした木が多いと価値が下がる。伐採工賃を出た丸太で払うのが多いから丸太の価値が低いと赤字になる。

場所も急峻な崖とか谷底では引き上げるのに苦労する。ある程度の面積が必要で5本や10本倒しても総金額が低すぎて採算が取れない。100本単位で倒す必要があるので面積にすると1町歩(3000坪)くらいは欲しい。

丸太を倒すと玉切りと言って長さを揃える。木は下が太く上は細い。だいたい20mくらいはあるから4mで4本は取れる。下から一番玉、2番玉、3番玉と数える。製材する価値は直径が30センチあるかどうかで決まる。1番玉と2番玉までが製材品、3番玉は合板用、4番以降はチップになる。CIMG0818

ご存知のように丸太は節の有無で大きく価値が決まる。1番玉は最上でほぼ無節が取れ2番は取れるのと節有りがある。山を見る際は立った状態で目の高さ(目通り)で直径を図り節を見る。見に行ったら目ぼしい木の直径を図りグルっと一周し節を確認する。何本あるかで山全体の金額が計算できる。

丸太は石(こく)という単位で直径✖️直径✖️長さで決める。石数と本数を数え石単価を入れると金額が出る。伐採工賃と運賃を引けば残りが売り上げになる。相場が安くて出す量が少ないと赤字もあるのである程度量を確保する。

自分の木で建てたい方の関心は材木で買った場合と比べてどうかだろう。40坪前後の家で手刻みすると構造材が150万円くらいになる。必要な丸太はおよそ1番玉で70本金額は60万円製材賃50万円運賃10万円伐採工賃40万円となる。70本を倒せばチップや合板に40万円くらいに売れる。伐採工賃40万運賃10万製材賃50万合計100万円。売り上げは1番玉60万チップ合板40万合計100万になってちょうどになる。およそ70本の倍140本倒して自分が使う材が出て差し引き0になる。

140本の山出しだと山によるが面積でおよそ1町歩ぐらいは必要だ。相当な面積になるが自分の家の材木代をひねり出すにはこの位必要だ。そして伐採工賃や運賃、製材賃は刻みの前に支払いなのでそれも用意しなといけない。

メリットは縁のある木を使えるのはもちろん選んで使えるの本来高い材木を買うのと同じになる。手間はかかるが良い木を使ってご先祖に縁のある木で建てることができる。一にも二にも山の状態次第で採算から材の良し悪しまですべて決まる。
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設計の世界—–長く続ける

設計事務所で長く続いているところはたくさんある。住宅専門となると意外に多くはない。官公庁とか大型物件専門のいわゆる大手のところは長く続く。経営者が変わっても会社としての価値が高いと言うことだろう。

当社も27年経つが後継者もいないので設計事務所は閉じることもありうる。工務店としては息子がいるので続くかもしれない。息子は建築士ではないので設計事務所を継ぐ可能性はない。

長くやって思うのは自営業は潰れないのが一番だと言うことだ。あまりに簡単な言い方になるが実感として思うことだ。同じ頃創業した仲間も随分いた。親から継いだものも含め半分いやそれ以上が潰れた。CIMG2193

仕事はいつも平均して来る訳ではない。サラリーマンとの大きな違いがここにある。良い時と悪い時の差をどうやって埋めるのか。答えは簡単だ、必死になって新しい手を考えてクリアする。これしか言いようがない。

勝ち残り組の言い分は優雅なものだ。自分に才能があったとか親が莫大な遺産を残したとか….何を言っても通用する。潰れたものはあちこちに迷惑をかけ家族をどん底に突き落とす。

私だけの経験だが4,5年毎にピンチは来るようだ。支払いに困り生活費にも事欠く。どうやってクリアしたかは余り思い出したくない。とにかく考え付く限りの手や借金で乗り切る。CIMG2161

この期間は企業の発展から見れば一種の停滞期間になっている。人間は危機に陥った時にこそ真剣に次の展開を探る。どこが間違ったかどうやれば再生できるかなどだ。奇妙なことにこの時に発展のポイントになることが起きる。

事務所を建てる、建築士資格を取得する、展示場を建てる。このままではダメだと危機感を持たないと行動しない。思い切った行動ができるのもこう言う時だ。

長く続けるにはそれなりに存在理由がある。支持する客がいてこそ企業は成り立つ。翻って当社の場合はどこが支持されたのかだ。一番は木にこだわったことだろう。時代の流れの真っ只中ではなく平行して違う分野を開拓したことだろう。CIMG2170

国産材を使った本格的な木の家、漆喰仕上げや真壁の少し古い家をイメージした。断熱や各種機能の発達で木の家から離れていく傾向がある。そこに少し疑問を感じ抵抗した。次の展開も見えない中で資格取得や展示場建設は相当な冒険だった。

今でも木の家は一定の支持があるが業界の流れは機能や設備の方向に向かっている。大手の戦略はこれしかないのだが職人の手仕事と言う観点からは相当かけ離れている。逆に言うと地元の職人たちに危機が迫っている。

消費税上げやオリンピックで景気は上がり下がりがあると思う。長期的には都市部の繁栄と地方の衰退から家作りに関わる職人が減っていく。出稼ぎもできない引退間近組が徐々に減るからだ。大手の限りなく工場生産品で作る家が市場を圧倒しそうだ。

その中で当社の生き残る道は手作りの木の家しかないと思う。山から出したり製材品とか困難は予想される。仮に最後の一つになっても可能性を探っていきたい。そのためのノウハウも職人たちとの連携もまだまだ捨てられない。CIMG2176


設計の世界—–車

27年も自営業をやると車遍歴もサラリーマンのようにはいかない。スタート時はそのまま乗用車。現場管理をしているとゴミとか資材を運びたくなる。小さい仕事だと余計自分でやらないといけなくなる。

乗用車から乗り換えたのは今はなくなったダブルキャブトラック。4人乗れて後ろに荷台がついた4輪駆動ディーゼルだ。マニュアルでオフロードタイプで人気があって流行っていた。それまで乗用車しか乗ったことがなかった。

郊外に住んでいるので自宅周辺は山だらけのオフロード。小学生だった子供を乗せ未舗装の荒れ地を走り回った。4輪駆動で大径タイヤの威力はすごく思えた。オフロードバイクも乗ったことがあって同じようなものと急峻な崖に挑戦した。CIMG0917

所詮は見た目のオフロード車でただの4駆のトラックである。湿っぽい土に4輪スリップ状態になりあえなくスタック。通りかかった乗用車に牽引を頼むがトラックの方がはるかに重い。不安にベソをかいた子供たちを乗せたまま探しに行って大型トラクターを見つけた。

何とか脱出して見た目だけのオフロード仕様は雪道に強い4輪駆動なのがわかった。オフロードバイクと違いトンデモないことになるのを学んだ。バイクは文字通りどこでも腕さえあれば走れる。

ハイラックスのダブルキャブ2700ccディーゼルは燃費は悪くなかった。リッター10キロは走る。4ナンバーなので車検は毎年だが税金は安い。毎年車検は考えようによっては整備をまとめてやるから丁度いい具合だ。トラックはとにかく壊す。DSC_3654

仕事も順調で現場も増えて運搬の回数が増える。ダブルキャブは荷台長さが1.3mしかなくてコンパネ一枚も積めない。ダブルキャブが当時大流行してカーディーラーから売ってくれと何度も電話が来た。

下取りが高かったのと乗用車も欲しくなった私は今も乗っているピックアップに乗り換えた。身分不相応とも言える外車のバンと2.1mの荷台の大きなトラックを買って有頂天だった。外車はそれまでの国産車と違いすぐ壊れて話にならなかった。

決断も早いが諦めるのも早い私は一度も車検を取らずに外車を売っ払った。後々ピックアップに22年も乗ることになるなんて夢にも思わなかった。また乗用車を買うつもりだったのだ。CIMG0780

若い時は車が欲しい、一種の病気のようなもので当時は3ナンバーが大流行していた。300万円以上の車がバンバン売れた時代だった。今中国がそういう状態に近いだろう。派手めで格好優先車が売れる。

家も同じで見た目最優先は後で高くつく。車と同じで壊れないのが一番で長持ちを優先するべきだ。乗り換えたピックアップは故障は少なく部品も安い。燃費も車体重量の割には良くて軽油なので安い。

車重1.5トンは伊達でなくシャーシが丈夫で多少積み過ぎても軋まない。ダブルキャブは前がウィッシュボーンで乗り心地は良かったが積みすぎると傾いた。こちらは4輪板バネで乗り心地は悪いがミシリとも言わない。

新興国のトラックは4輪板バネが主流だ。故障が少ないのと自分で交換もできる。砂漠やジャングルで故障したら命が危ない。タイなどで生産されているトラックが国内に入らないのは排気ガスもあるが乗り心地が相当硬いからだ。CIMG0790

ピックアップに乗り続けるには覚悟が要る。相当硬いショックと板バネにリサーキュレイションボルトのハンドルは切れ角が小さい。狭い駐車場だと簡単に出入りできない。2トントラック並みだと思えば良い。4車線のUターンは大きく廻らないと恥をかく。

仕事でクレーン付きとか2トントラックとか所有したが処分して今は残っていない。維持費も車検や保険、修理費で相当だ。一年に1000キロと借りた方が安上がりになる。買うより借りるリースの時代が来た。


設計の世界—–設計手法

長く仕事を続けると素人である施主が何を望むか少しずつわかって来る。流行り廃りも大きいし家のイメージは年々変わる。テレビのCMの影響はビジュアルのデザインという要素を強くした。一部を切り取って都合の悪い部分をデフォルメして流すのが普通だ。CMだから仕方がないが一瞬の印象だけを強く受ける。

施主がどう言うのを望んで家を建てるかをすぐキャッチ出来るのは才能だ。普通は暖かく明るい家が一番人気で好まれる。断熱はとにかく明るい家すなわち窓の大きな家はいつまでも人気がある。断熱はメーカーや建材店などが必死で売り込むから年々進化している。予算さえ許せば最高のものを手に入れるのは簡単だ。

明るい家はイメージとして捉えがちで断熱のように数字化しにくい。照明器具などと昼の明るさがあるが日中の陽がサンサンと入るイメージが多い。建築基準法では床面積の1/7の開口面積が必要だ。面積よりも位置が重要で大きく差が出る。000_0598

窓から逃げる熱損失は壁などよりも3倍も大きい。大きな開口は明るく魅力的だが熱損失が大きく暑く寒い。暑さ対策には直射日光を遮ったり大きな開口で換気出来る方が有効だ。エアコンにだけ頼ると開口を高性能にしても少しも省エネにならない。

何回も家を設計して住んでからの施主の意見も聞くことが多い。設計時に狙った効果が上がらず逆に予想しなかった効果が上がることもある。換気とか明るさは家の向きや隣地により大きく影響を受ける。風の流れを予測しないと窓を開けても空気が流れない。

天窓は明るさという点では優れている。しかも隣地の影響も受けにくいい。同じ面積なら3倍明るく囲まれた部屋などでは有効だ。欠点は屋根に設置する場合は結露しやすく掃除も面倒だ。DSC_2791

日本のサッシの断熱性能は世界的には劣っている。中国や韓国の基準より日本の方が低い。欧米はもちろんもっと厳しいが家のデザインに自由度がなく種類も少なく安い。

省エネ基準は平成20年から厳しい基準が義務化される。トリプルガラス入りは標準になる。価格的に高くなるので小さくしたり引き違いなどが減ってくるだろう。引き違いサッシは開口面積を大きく明るくできるが省エネには不利だ。

住宅会社や工務店などは省エネ基準をクリアするために開口を小さく高性能にする傾向がある。コストも下がるが換気や明るさには無理がある。しかも外部デザイン最優先で一般的に開口は小さい。建ててから暗い家が多くしかも隣地から影を考慮しないのもある。DSC_2788

省エネ性能ばかり謳って住んでからの換気不足でエアコンフル回転の家になりやすい。それにビニールクロスと建材多用では健康にも悪い家になる。価格競争もあって見学会では日中の暗さは照明で誤魔化し換気も最低の基準クリアで済ます。

当社のように古民家とか和風っぽいデザインは開口が大きなりがちだ。南面だけを大きく他を小さくして数字的にはクリアできても換気通風ができない。敷地の風方向を調査し開口の配置を考えないとならない。日の入らない窓はトルプルなど高性能化し小さくする。明るさもあって数を増やす必要が出てくる。

ヨーロッパでは屋根とか外壁に規制がかけられるところが多い。そのために古き良き時代の風景が残されている。しかしその場合でも省エネの基準はしっかりと守らなくてはならない。一番逃げる開口が小さく高性能になっている。

規制のおかげで外部デザインは不可能だからその分コストが下がる。しかも街並みの統一感があり石やコンクリート造りなので長寿命で窓のコスト分は十分ペイする。日本では自由すぎるデザインが街並みの不統一とコスト高を招いている。DSC_2816