青森県八戸市の一級建築事務所 建築組 パックス有限会社

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職人の世界—–自分の木で建てる1

国産材の現状についてどれだけの方がわかっているだろうか。郊外を車で走るとあちこちに潰れた製材所が見える。廃業したかたまにしか営業していない。

青森県内の丸太の生産は60万立米そのうち大手の集成材工場が12万立米を買い取る。かっては120万立法も出したが県外に出荷する量も多かった。県内消費量が減ったので製材所も成り立たなくなる訳だ。

山林所有者でも林業で生計を立てているのはほんのわずかだ。大部分は相続などで分割された山林所有者だ。自分の山に入る道路もなく手入れもしない放置林が増えている。DSC_2878

当社は自分のところの山の木で家を建てると言うのを推進している。自分の所有でなくても曽祖父伝来の山を持っている例は多い。家を建てようと思う時に思い出す。そして初めて現地の山を見ることになる。

自分の山の木で家を建てるには山を見て調査が必要だ。搬出するルートがあるか、適した樹齢かを調べる。まず出すための道路がないと難しい。杉など針葉樹であれば樹齢50年以上は必要だ。伐採や搬出には経費がかかるので先払の費用が発生する。

搬出と樹齢が解決できても費用の問題がネックになる。自分の使いたい量より多く出して一部を販売する方法が現実的だ。売却した分で伐採、運賃を支払う。持ち出しがなく先祖の木を使えるのとある程度選んで使える。
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過去にこの方法で家を建てた方は何人かいる。金額的に利益を出すというよりも太さや使用量に制限なしで建てられる。これが一番のメリットになる。太い柱や板張りの内装とか自由に製材してオリジナルの材料を作れる。

注意しなければならないのは原木市場が安く丸太販売は厳しいと言うことだ。10年以上前であれば杉で石4000円位したものが3000円以下になってしまった。素人が考える金額よりも大分安くなっている。

樹齢が若い等級が低い丸太が多く出ると工賃や運賃と相殺になってしまう。樹齢は7,80年クラスでないと赤字になる可能性がある。その場合でも一番玉と呼ばれる下の太い部分だけが上物になる。半分以上は二番玉以上になるから安い丸太が多くなる。CIMG3621

まして若い木が増えると等級も低くなり持ち出しになってしまう。建て主の中には山の存在は知っていても樹齢とか種類など把握している方は少ない。木の種類、年数、面積、道路の有無これくらいは把握する必要がある。

次に自分の家に使うためには製材、乾燥が必要になる。丸太の状態で放置しても乾燥しない。製材して桟積みをして乾燥する。当社では1年近く乾燥した材木のみを使っているので相当期間が必要だ。CIMG3535

伐採時期もあるので冬に伐りすぐ製材乾燥して夏以降に建てるのが一番最短になる。出す量も使用量より多く出し一部は丸太販売をする。製材後の余った材木は当社で買取をする。伐採工賃、搬出運賃、製材工賃を丸太販売でカバーできれば持ち出しはなくなる。

自分の山の木で家を建てることは二重に意味のあることだ。ご先祖が植えて手入れをした思い入れのある木を使える。地球環境のためにも放置でなく手入れをすることは重要なことだ。単に経済的なメリットだけだと難しい。原木市場の低迷とは逆に伐採や製材の工賃は高い。その中で自分の山の木を使うことは次の世代に受け継ぐ上で重要なことだ。


職人の世界—–大工その4

世の移り変わりは激しい。20代から40年見てきて職人の世界も変わった。一番は数が減ったとこだろう。手作りとか手刻みが減って建材による工業化が進んだ。

伝統的な家作りは減ってなくなるのは間違いない。技の継承も廃れる運命にある。マスコミ的には珍しいのを見るように取り上げられることもある。

都市部では匠の技を残すためには高価格の現場を狙う戦略が増えてきた。数奇屋や超高級店舗などを手がける。宮大工の世界もプレカット化は進むから残る分野は少ない。
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現場では腕のある大工も電動しか使えない大工も一緒に働く。特に手間賃の差はない。技術の価値が低いと言うことだ。30年も前から気付いて鑿鉋を捨てた大工がいた。

スピード第一でプレカットも建材もいち早く取り入れるやり方に切り替えた。老舗工務店の跡取りだが腕の達者なベテランを首にして素人を採用する。
肝心の彼からして大工修行なしでサラリーマンから後を継いだ。自分ができないものは社員にも要求しない。000_0257

私が独立する前だったが一緒の現場をやったことがあった。現場監督の経験のない私でも出来の悪さは一目瞭然だった。
打つべきところに釘を打たない、ホゾが短く効いていない、ボルトの締め付けを忘れる…..。

当時親会社は地域で一番の建材会社だった。建材とともに大工も紹介されていたので変えることはできなかった。案の定施主との間でトラブルになり親会社まで巻き込んで騒動になった。

大学卒で元営業の工務店の社長は施主との間の話をうまくつけた。利益を削る結果になって早く工事したことは何の意味もなくなった。000_0272

プレカットの現場を見ていると彼のやり方が正しくてこだわる私がおかしく思える。スピード第一で端折る隠すは普通になった。見える部分しか評価されない家作りだ。

後で狂わないように差したり嵌め込んだり栓を打つとかは見えない仕事だ。完成後では見えない部分にこそ凝るのが大工というモノだ。

目新しさや目立つ部分しか評価されない現状は30年も前に彼が気付いたことだった。しかし時代の流れは彼の予想よりも早かった。000_0253

アフターやクレームに振り回されるようになる。そして若い大工が次々と独立して彼の仕事を奪う。技術レベルの低さは習得の早さも意味する。
親の残した立派な作業場はアパートに建て替えた。食品や化粧品の販売に主力を移して事実上の廃業になった。

時代の流れについて行くのは大変なことだと思う。客や取引先だけでなく不動産から機械まで引き継いでも生かせない。ましてや前向きに信念を貫き通すのはもっと難しい。彼から学ぶことはなかったが今になってわかったこともある。


エアコン

昨日も暑かったが今日も暑い。曇りがちで少しだけマシなような気がする。
事務所の窓を全開にして風を通すと我慢できる限界でエアコンをつけなくても良い。
自宅にもエアコンはないので毎年暑がりの家内に攻められる。せめて寝室だけでもと言われる。
一階の続きの和室に寝ると快適なのだが布団を敷くのが面倒らしい。私は暑い日は和室に寝る。

新しい設計をする時は通風を重視する。エアコンに頼るのではなく自然の風を通したい。
高気密は冬の暖房を主眼にしており夏はあまり考えていない。寒冷地ではどこもそんなものだが温暖化となればそうもいかない。
これから真夏日が続くこともあるので涼しく過ごせるのは大事になる。何でもエアコンではなく通風による冷房も考えたい。

薪ストーブとエアコンの組み合わせが多いが夏に使えるのも一因だ。暖房の補助と冷房ということだ。
薪ストーブは家全体に熱が回るように設計する。そのことは通風にもなる。
一階の熱を二階まで送ることは夏になると涼しくなるに違いない。ただ二階は熱が溜まることになるのでそれをどうするかだ。
ロフトを作ってそこから熱を逃がす構造にしたりする。上昇気流が発生するという感じだ。CIMG2144


職人のこだわり

昨日は葬儀で夕方までかかった。亡くなったのは103歳でたくさんの参列者があった。
これからこう言う超高齢者というか長生きの方が増えると思う。自分と配偶者、子の配偶者、孫の配偶者さらに曾孫までいる。
文字通り一族郎党の集まりになってしまう。子世代が80歳代孫世代が50歳代曾孫が20歳代になってしまいます。
これだけ集まるのはもう暫くないと思います。遠くから来る親戚もあってちょっとしたイベントのようです。

今日は図面もなく見積書類の書式を直したりブログやコラムの手直しをしました。特にコラムは長いので大変です。
原稿用紙4枚弱ですが読み返せば文章の不備や語彙の間違いなどが結構あります。これで10枚とかになるとどれだけ大変か。
小学生の時に夏休みの宿題で書かされましたがあれはシンドイものでした。頼まれもしないのに何十枚も書くわけですから疲れます。

HPの作り変えはかなり前から計画したのですがその際に職人のこととか現場のことを書きたいと思っていました。
自分の家を建てるのに職人が必要なのですがどういう人たちか良く知らないと思います。家は三分の一材料三分の一工賃三分の一諸経費と言われます。
三分の一を占める職人たちの工賃ですがだんだんその金額は減りつつあります。建材が増えて省力化が進んだからです。
手作りからドンドン離れてできたものを組むと言うのが当たり前になりました。ゼロになることもないので建て主に職人の心意気やこだわりのようなものを知って欲しかったのです。


久しぶりのブログ

ここしばらくはコラムばかりでブログはお休みしていました。今日は法事があって朝晩しか仕事ができません。法事が済んで戻ってから書いています。
明日はすこし打ち合わせがあって午後からまた葬儀。高齢の叔父叔母が多いのでこれからも続きます。
両親は長男長女なので下が一杯いるってことです。久しぶりに会う親戚ですが皆歳をとって明日の葬儀は104歳です。
モタモタしていると私の方がどうにかなりそうです。現役で頑張ってまだまだ長生きしないと。

連続で延々と続くコラムですが原稿は書き溜めてありました。直して写真をつけて1時間ちょっとでできます。
書き溜めたのはもうないのですが職人のことなどをこれからも続けたいと思います。コラムは文字数で1500字前後。
原稿用紙4枚弱、テーマが決まらないと書けない量です。ブログなどはいきなり書いていきますがコラムは無理です。
テーマを決めてあとは思いつくまま書き1,2日おいて手直しします。読み返せばけっこう間違いや思い違いがあるものです。

コラムはいつかは職人の世界を書きたいと思って溜めていました。家を建てるかたに職人はどんな人たちか知って欲しかったのです。
身内や親戚にでもいれば分かるでしょうが理解しにくい人たちです。サラリーマンが普通なので感覚がよく分からない方が多いでしょう。
独特の価値観を持ちある意味では規格外のような人たちです。話してもなかなか理解しにくいところがあります。
お上品ではありませんし勉強が苦手か興味なしが多いのです。サラリーマンだけで家ができるわけではないのでこういう人たちもいると言う事を知るのは大事なことです。