青森県八戸市の一級建築事務所 建築組 パックス有限会社

090-1060-9764

職人の世界—–薪ストーブ

薪ストーブである。独立以来取り付けたストーブは10台以上に上る。最初につけたストーブは15年以上になる。東日本大震災では停電中暖房はもちろん煮炊きまで大活躍だった。以来ストーブの取り付けを検討する方が増えた。似たような燃やすタイプのストーブにペレットストーブがある。燃料が手に入りにくく普及しない。

薪ストーブは電気も使わず環境にも優しいというイメージがある。薪を燃やすわけだから二酸化炭素と水を吐き出す。それだけでなく煙の中には匂いや様々排出する。もし全世帯が薪だと環境悪化になるのでヨーロッパでは禁止されている。だから環境に優しいかどうかは疑問もある。DSC_4796

さらに燃料の薪だが良質の広葉樹にこだわれば山から出すのが間に合わない。将来は輸入物の可能性もある。住宅街では匂いがご近所迷惑でトラブルのところもあるので注意が必要だ。郊外で敷地も広く保管スペースや割る場所もあることが条件になる。

純粋に燃料費から見てコスト的に安上がりかどうかだ。薪だけで暖房するとすれば一冬で5,6万円くらいの出費が必要だ。電気や灯油による暖房でも一冬だと同じかそれ以上になる。ただし保管スペースや手間を考えると安あがりな部分もある。CIMG2174

建物の設計にはかなり検討が必要で大きく左右される。高断熱の普及で全館暖房が可能で薪だけでも十分だ。熱の対流や薪の搬入などしっかりと設計することが肝要だ。掃除のしやすさとか焦げたり火の粉が飛んだりするので配慮する。基本的には土間で吹き抜けが一番効率が良い。

確認申請では消防法の規制による検討が必要だ。遮熱壁を設けたりすることも多い。遮熱壁を設けると内装制限はなくなる。大きな部屋でもない限り内壁から一定距離取れない場合は遮熱壁を設ける。床は制限はないが汚れや火の粉対策で大きめに必要だ。DSC_3483

薪ストーブはストーブ本体よりも煙突が重要で値段も高くなる。断熱材入りの二重煙突を使えばタールが垂れたりススが詰まったりしにくい。燃えも良くなるので最低必要条件だろう。自分で購入取り付けもできるが専門の業者に頼むのがベストだ。メンテナンスと煙突掃除もやってもらえる。

ストーブ本体は輸入物の鋳物ストーブが主流だ。伝統もあって作りがしっかりしているのとノウハウが違う。国産もあるがノウハウも少なく大きなメーカーもない。安い中国製も出回っているが煙突も含め自分で設置なので住宅用としては使えない。CIMG0023

煙突も二重煙突は輸入物が主流で性能も良い。ストーブ本体から真上に屋根に出す方法と壁からだして外を立ち上げるのがある。基本は真っ直ぐに立ち上げるのが良い。屋根から出す場合は防水が重要で出し方がある。

煙によるトラブルは今後気をつけなければならなことだ。風向きによってはお隣に匂いがいく。燃やす薪にもよるが完全に乾燥していないと特に臭い。煙突を高くつけたり十分な対策をとる。煙だけでなく薪を積む際に虫がついて問題になることもある。CIMG2012

薪を自分で割ったり木を用意すれば安く上がる。割る場所と保管場所が必要でチェンソーを使う場合は騒音に気をつける。運ぶのにトラックを用意できれば完璧だ。薪置き場はあったほうが良いが屋根だけでも十分だ。

薪ストーブの輻射熱はエアコンなど違い体に優しい。ゆっくりと一日つけて暖房すると快適だ。クッキングをやったりお湯を沸かしたり活用次第で使い道は色々有る。インテリアとして見ても自然素材住宅には向いている。100_3953


職人の世界—–三和土

三和土と書いてたたきと読む。土、石灰、苦汁を入れるからだという説もある。調合されたセット物も売っているし自分でも作れる。
混ぜる土の色が仕上がりの色になる。黒土とか砂でも可能と言われるが当社はやった事がない。着色が可能で黒くする時は粉炭を混ぜる。

京都の聚楽土を使った土間用土のセットが販売されている。こちらは現場でそのまま水を混ぜ固めるだけで良い。他にも全国で色々販売されている。
地元産だったらゴロダと呼ばれる粘土タイプの土と苦汁、石灰、粉炭を混ぜて叩く道具で叩いて仕上げる。粉炭は黒くするためで黄土色で良ければ入れない。CIMG0907

昔の農家は内土間があって黒い土の土間だった。藁葺きの家は日が入らず夏は涼しい。土間がヒンヤリと湿っぽかったような気がする。日が当たる部分だけは乾燥して割れたり埃になった。
今は暖房も効いているしコンクリートの上に施工するからすぐ乾く。ガッチリと固まるタイプでないと実用的でない。既製品のセット物は固まるタイプが多い。

住宅としての機能が一番重視される中で土土間や土壁は問題が多い仕上だ。乾燥しすぎて割れるし断熱も施工が難しい。そう言う欠点があってもなおこだわるのであればそのまま受け入れるしかない。
土壁もほとんど断熱を入れるスペースがない。床の土は逆にただのコンクリートより歩行感に優れる。
ただし今はコンクリートの上に10センチくらいの厚さで仕上げるからあまり効果は期待できないかもしれない。CIMG0908

壁の仕上もボードの上に土を塗ってさらに漆喰で仕上げるやり方もある。竹小舞をやらないで簡易にラスボードの上に塗る。
土は藁を混ぜて外に寝かせて発酵させ作っていた。発酵させるとヌルッとなって塗りやすくなる。藁はそのまま繋ぎの役目で割れにくくしている。
真壁で本格的な古民家風には似合う仕上だ。仕上はほとんど漆喰で塗り厚もあるので吸湿、吸臭効果はあった。

吸湿、吸臭効果は土間にもあったかもしれない。ただ外部から靴を通して色々持ち込まれるので分かりにくかったと思う。
固まってしまえば多少の水を撒いても大丈夫で強く削ったりすると穴が開く。ネットで知識としてはなく現場で施工を通して効果や硬さ、施工の簡易さなどがわかる。
施工法など現場での知識があるので満足のいく仕上ができる。左官屋も土蔵の土壁とか三和土の経験が豊富な業者である。100_3285


職人の世界—–加工機械

手刻みとか手作りというイメージにはノミ、カンナだけで建てるイメージがある。
大工が手押しカンナでやるのは大昔のことだ。カンナ盤と呼ばれる電動の機械が登場して4,50年になる。
製材された材木は乾燥の間に曲がったり捻れたりする。直角に決められた寸法に揃えないとならない。押しながら削る万能木工機を昔の大工はほとんど持っている。中古で30万新品だと7,80万くらいか。

押さなくても自動で削れるタイプには直角二面と上下二面の自動カンナ盤がある。先に直角を決めて平行を通して使う。
二つないと不便で平行は板とか厚さを決める時にも使える。厚さはデジタルになっているので簡単にしかも細かく加工できる。厚さを揃えたい時とか現しでは加工する機会が多い。直角は自動送りにしないで手押しで加工したりする。DSC_4934

ネットなどでも新品の値段は出ていない。メーカーや機械屋と交渉になるが何百万単位になる。
手刻みの衰退で機械を手放したいところが多く中古市場も活発だ。処分しようにも鋳物製が多く相当高く付くからだ。中古と言ってもピンキリで百万くらいから上は外車が買えるほどになる。

中古の中には40年物とかが出たりする。本体は壊れないのでモーターさえしっかりしていると刃物は消耗品なので保つのだ。
メンテナンスが重要で刃とかベルト類など消耗品がかかる。カンナ盤は荒仕上げなのだが刃が切れないと余計凸凹になる。新しい刃物にすると手カンナがいらないくらいだ。DSC_4933

設置で大事なのは削った鋸屑の処理だ。性能が良いカンナ盤は猛烈に鋸屑を吐き出す。
一々集めたりしていては大変なことになる。ダクトパイプで集めてサイロのようなところに貯める。家一軒ともなると2トンダンプに満載で4,5台にはなる。パイプで機械とサイロを接続して送風機で送る。

意外とかかるのがサイロだ。鉄製で下から口を開けて落とすタイプが多い。当社のは下にモータが付いていてトラックに送ることができる。
最初からサイロがあって使わないでいた。それが使えることも設置を考えた一因になっている。新たに作るとなると何百万もかかるだろう。DSC_4946

他にも作業場には機械がゴロゴロしている。刻みの時に仕口を作るホゾ取り機、割ったするバンドソー、超仕上げカンナ盤、卓上ボール盤…..キリがない。
それらを少しずつ揃えて加工を早くできるようにする。機械にかけるか大工に手間賃を払うかだからいずれ揃えることになる。

機械なしで手刻みをやろうとしても人件費が増えるだけだ。しかし機械は維持費もかかるし何と言っても稼働率だ。使うほどにコストが下がるという事だ。
手刻みが減ってきたら宝の持ち腐れになるし借り入れも返せない。今後大工が減る事を考慮しても機械にコストをかけるのは止むを得ない。CIMG2289


職人の世界—–吊るし切り

廃れる運命にある職人は数多い。その中でも伐採職人の吊るし切りは特別だ。
そもそも伐採職人は激務と事故率の多さで減る傾向だ。あまり脚光を浴びる事もなく地味な仕事である。最近山仕事が映画化されたりちょっとだけ見直されている。

最初に吊るし切り職人の事を聞いたのはもう10年前になる。やってきたのは60代と思われる背の小さい職人。
仕事にかかるとスルスルとまるで猿のように木に登っていく。身のこなしは見かけとは全く違う。

家の周りに木を植えるのは田舎では普通の習慣だ。家が建ち始めると倒せなくなる。
崖崩れ防止に植えたので大木になると倒れる危険が増す。大風の夜は隣に倒れたりする心配で眠れぬ夜になる。伐採を相談されて欅の大木欲しさに請け負ったこともある。CIMG3605

製材所や伐採職人と相談の上で吊るし切りを呼ぶ事になった。特殊技術と危険手当もあって手間賃が3倍。
しかもスケジュールも詰まっているので向こうの言いなりになる。クレーン車とグラップルを用意して決行日になる。

まずはロープを担いでクレーンのフックに掴まりながらあっという間に木に登る。上に着いたらロープを木に引っ掛け今度は自力で降りてくる。
次は根元をチェンソーで伐る。伐りながらクレーンで持ち上げゆっくり倒す。CIMG3633

一本倒すのに30分ほどかかる。普通に倒せるのは吊るさないから本数は少ない。
欅など枝が多い木は登って行くのに自力になる。どんな大木でもクレーンは15トンくらいは吊れるので登りさえすれば倒せる。杉など長さがあれば降ろしても倒せないので途中から玉切りをして伐る。

伐採の世界は冬仕事になる。夏は農業というのがいて約束を守ると言う概念が薄い。何たって農作業優先でアルバイト的な感覚がある。
しかし今では一年中伐るし職人も専門化されて掛け持ちも減った。若い伐採職人は森林組合などに多くサラリーマン化した。CIMG3595

夏伐りは水分が多く乾燥にも時間がかかり価格も安くなる。伐ったらそのまま寝かせて葉枯しと言うやり方も多い。時間と手間が二度現場に行く事になって高くつく。
寒伐りは職人も農閑期で乾燥にも都合が良い。山の寒さは街中より2,3度低くて隠れる所もなく強烈だ。立ち会でしばらく立っていると長靴の底が凍ってくっついてしまう。

写真の吊るし切りは二度目の住宅街の伐採だった。10年経ったら息子に代替わりしていた。
親子なので直伝で一人で来るところも変わらない。年齢は40代後半と言うところか。その時の木は樹齢5,60年の杉とサワラで小さい方だろう。もちろん木は私が全量買い取った。CIMG3637

学校など公共施設や住宅街でも5,60年を越した木は簡単に倒せない。吊るし切り以外に方法がない。需要は増えていると思うが職人が増えたと言うのは訊いたことがない。
高所作業車を使うとか足場を組むとか金がかかる方向に向かっている。労災の面から問題視されることもあるからいずれいなくなる可能性が高い。


職人の世界—–現場の職人

今まで書いた職人のほかにもまだまだ現場には集まってくる。基礎工事の前に地盤調査をして基礎を検討する。
その際に弱いと判定されたら改良工事をする。住宅では概ねパイル打設か地盤そのものを固める改良がある。パイルはコンクリート製か鋼製になる。
地盤を改良するには土を全部入れ替えるかセメントを土にを混ぜるかがある。混ぜ方もポイントを決めて60センチの柱状に穴を掘って混ぜたり、全体を満遍なく攪拌する方法がある。
業者ごとに売りがあって一長一短で競争があって価格が大分下がった。データをよく検討して現場に合わせて施工する。

上棟が近くなったら先行足場を掛ける。これも昔は労働基準法違反の大工の足場が多かった。今でも自分の足場を持っているのがいる。
掛けるためには主任者の資格が必要でそれ以外はできない。他にも組み立て主任者、クレーン操作時には玉掛けと色々現場は資格が要る。労災関係が多くて当社はクレーンと玉掛け、組み立て主任者は皆取得している。
足場は外部工事の終了で外される。足場は少ない人数でも可能だが競争によって集約化が進み大手になった。足場リース業は回転が命だから早くバラしたがる。当社は手間暇を掛けるので時間が掛かりいつも急かされる。CIMG3384

大工たちがいる間は道具屋と言う商売が現場へ来る。工具を買ったり修理したりビスなど細かい部材を買ったりする。
原則として現場配達なので大した金額でなくても持ってくる。職人は買いに行く時間もないし道具にはウルサイ。些細なことでも修理や値引きを細かく要求する。
壊れると仕事にならないのですぐ修理しないといけない。安さよりアフターが良いところが好まれる。大工仕事の変化は道具屋の売り上げにも影響がある。

当社には無縁そうな仕事がクロス貼り職人。昔は表具屋が多かったが今は独立した職人が全盛で増えた。
ここ20年ほどは仕事量も限界に達したか職人も減っている。かっては若い職人が多かったが40代が増えた。床工事や和紙を貼ったり襖もできる。
競争の激化で価格が下がり丁寧さが少しなくなった。今後も増える見込みもなくカーテンなどインテリア関係に力を入れている。大した道具も要らず軽のワンボックスがあればできる。CIMG1187

オール電気が増えて灯油やガスによる暖房が減った。パネル暖房や床暖房などをやる暖房屋がある。熱源は変わっても施工そのものは同じだ。
ポンプとかサーモスタットとか電気の知識が必要だ。電気工事のように年々進歩して勉強が必要だ。
暖房はアフターが多い職種で夜中に暖房が故障したりする。機敏な対応ができないと困ってしまう。10年とか長いスパンで修理の依頼が来るので業者に辞めらると困る。親子とか二人くらいで規模が小さいところが多い。

4,5年前から増えているのが薪ストーブ屋だ。東日本大震災以降電気を使わない暖房として見直された。高断熱が普及してストーブ一台で家中温めるのが増えた。
輸入物の鋳物ストーブが主流で国産の鋼板ストーブもある。薪ストーブは煙突の出来不出来で大きく左右される。本体の値段よりも煙突工事が高い。
設計段階で業者と綿密な打ち合わせが必要で煙突の位置と長さ、屋外の高さが重要だ。煙突の材料も輸入物が多く断熱煙突を使うのが普通だ。DSC_4730