青森県八戸市の一級建築事務所 建築組 パックス有限会社

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設計の世界—–設計士

設計士と言う言葉は正式にはない。建築士が正しくて基準法で定める正式名称だ。あえてここでは設計をする職人と言う意味で書く。ご存知のように建築士は一級、二級、木造と三種類あって試験を受けて取得する。

役所への申請や管理業務には必要だ。設計が出来るから建築士なのではない。どちらかと言うと法規上の可、不可を判定するのが主目的なのだ。行政は違法建築物を取り締まる際に建築士を関与させてそれを代行させる。

主目的が遵法であるから間違い探しが仕事になる。施主の側から見れば法に触れないものはどんなのがあるかと言うことだ。設計業務を施主の希望を叶える点で言えば満点ではない。基準法という枠が嵌められるからだ。CIMG0781

昔からの伝統構法の建物は現在建てられないものもある。藁葺き屋根とか石場建てと呼ばれる束石の上に建てるのはできない。地場産業活性化による規制緩和とか層間変形角による構造計算などと難しい問題をクリアしないといけない。

設計は家を建てるためには必要なことであるから設計士は要ることになる。法規上の名称は建築士であっても設計の一部だと考えられる。設計士は施主の意向を汲んで要望を叶えるのが仕事だ。たとえ建築士でなくとも経験のある大工は設計士だと言える。

木造建築物はすべて在来の構法で建築可能だ。防火や耐震性をクリアできれば大工でも設計できることだ。行政に申請する際には建築士の資格が必要なので有資格者が有利だ。基本的に違法建築物は不可能なので最初から理解できるのは早い。CIMG0790

木造住宅も在来構法とツーバイフォーなど枠組み構法、金物による構法などがある。昔気質の大工にできるのは在来構法だが金物とか追加されて耐震性の検査に対応する。軸組による構法ではピン構造なので仕口や水平の揺れを防ぐ筋違とかが重要になる。

神社仏閣などは筋違はなく貫と呼ばれる材木で対処する。筋違よりは抵抗力が小さいので揺れを止めるのではなく減らして仕口などの強度と一緒に抵抗する。基準法では抵抗力の数字が重要なので沢山入れることになる。仕口の強度は基本的に合算はされないから確認申請には注意が必要だ。

職人不足に対応するためプレカットが普及した。住宅設計のあり方も変化して分かれる傾向がある。デザイン、設備関係と構造設計の二種で設計事務所はデザイン優先が増えた。住宅では構造計算も簡単で仕口とか事実上考慮することもない。CIMG1661

デザイナーを志す設計士は刻み以前の工程を知らない。木を出して製材乾燥し木拾いをして刻む、この工程を踏むことはない。ますます建材多用で規格化された家を表面的な仕上げ等でデザインする建て方になった。

素材の持つ質感とか曲がりなどの自然の魅力は無視される。工業製品であるから素材や仕上げにこだわろうとしても規格以外にできない。こうした家つくりが本当の設計と言えるのか疑問がある。地元の木を使った家つくり以外に実現できる方法がない。

単に表面に板を貼ったり従来のベニア製の床材から無垢に変えても本物とは言えない。柱や梁材の持つ魅力や漆喰の壁の真壁つくりは構造から別物である。プレカットは二次元的な平面の間取りだけで設計できる。無垢材の真壁つくりは材の選定から仕口加工に至るまですべて設計する。

素材自体が仕上げであるから木の知識は必要条件で在庫まであれば理想だろう。曲がりや大黒柱、梁は同じ樹種、寸法でも見た目が違う。選べるのは設計上も有意義なことだ。そう言う設計では在庫だけでなく製材所やきこりの協力が必要になる。すべて条件をクリアする材料を揃えるのは一社では難しい。

当社で山出しにこだわり続けるのはそうした各種業者との連携を大事にしているからだ。山の崩壊が懸念される今山の木を出すことが最重要なのだ。ただそれを設計できる業者が減ってしまった。あり余った植林された木は伐採を待っている。活用されるのが減り続けるのは大変残念なことだ。CIMG0832


設計の世界—–建築士の仕事

山から木を出して家を建てると元請けの大工の能力が大きい。山出しから刻みなどの設計まで中心となって進める。建築士のいなかった昔はかなり進んだ技術と知識のある設計士だったに違いない。

棟梁と呼ばれるこれらの大工は受け継がれた知識と経験で家を設計していた。図板と呼ばれる板に材木の寸法から仕口の種類や位置などを書き込む。他の大工が見てもわかるように記号を使って描いていく。

図板は右上が北に来るように書くのが一般的でX軸方向左横にいろはにと柱位置ごとに振っていく。Y軸方向は下に漢数字で一二と振っていく。それを一階床、二階床、桁廻り、母屋と作る。省略して2枚の場合もある。100_1948

間取りを決めるには施主と打ち合わせしながら山の木をどこに使うかなど決めていく。昔の間取りは定型化されていたので独自のデザインとかは少ない。あるとしたら細かい仕上げの部分で差別化する。梁を大黒に貫通させたら鼻栓を出すとかそう言う部分は大工のセンスだろう。

構造も今だったら計算によるが昔の大工は経験や知識で作っていく。個々人の自由よりは昔からある経験が最優先だったに違いない。それを補強する技術の開発は大工個人の資質による部分が大きかった。ヨーロッパの古い建物や集落はこうやって作られた。

古い古民家の解体で建てた大工のこだわりの程がよくわかる。強度を上げるための仕口や栓は複雑になっていく。他の大工よりは少しでもいいものをと言う熱意が複雑にしていく。今でいうデザインのようなものだろう。

大工が全て仕切った頃と今の家つくりはだいぶ違っている。設備関係が増えて構造は箱のような機能だけを要求されるようになった。プレカットが増えて少なくとも木造住宅では素人でもできるようになった。間取りさえ決まれば構造計算はプレカット業者がやる。100_1298

大工が現場職人になってデザインと設備関係が設計士の仕事になった。設計事務所は行政に出す確認申請に沿った設計図面を描く業者になった。インテリアコーディネーターやデザイン専門の仕事も増えている。

設計士の重要な仕事に現場管理がある。設計図面通りに施行されているかをチェックする。行政に代わり検査するのだからそれなりに厳しい。ただチェックと言っても金物とか全行程のほんの一部に過ぎない。

100年住宅とか長持ちする住宅も話題になったことがある。基準法や規則で定める耐久性は建てた直後の強度を目処にしている。木材の経年変化や金物だけに頼る強度は長期の耐久性に心配がある。基準法は今でも未完成部分を変えながら現状に合わせた法律になっている。

基準法は何百年とか長期に渡る技術の積み重ねはない。昔の棟梁は何代にも渡って受け継がれてきた技術と知識で建ててきた。細かい亀裂が入っても倒れない構造と揺れないことを基本とする法ではどちらが有利かわからない。100_1225

少なくとも現状の家つくりでは構造はプレカット業者がデザインや行政の申請は設計士がやっている。木材も集成材が主流で建材と同じような経年変化を考えている。構造は後で交換ができないものだから問題はある。

住宅会社はデザインと独自の金物による強度をウリにして営業する。あくまで建材で作るやり方で無垢材や在来の仕口などのやり方とは違う。経年変化は気密性を高め密閉することで対応する。本当に耐久性があるのかまだ証明すらされていない。

設計士はこう言う建材だけで家を建てるやり方しかできないところが多い。見える部分のデザインが最優先される現状はますますその傾向が強くなる。古い在来の構造や金物仕口などが理解できない設計士も多い。

地元の木を使って昔からの大工の技術を活用した長持ちする家を建てる設計士は少ない。設計しても作る大工がいなければ絵に描いた餅になる。設計士は昔で言えば棟梁の代わりであるから全て指示できないとならない。設計士と大工はあくまでセットなのであってどちらが欠けても良い建物はできない。
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運動会

昨日はいつもの温泉に家内といく。孫たちは連休で遊びに行っていない。
久しぶりに娘と一緒に夕食へ。日、月と連休で仕事も休み。
図面や打ち合わせも少しずつ減って時間が取れる。これからに期待と言うことだ。
今日は午前中はそうでもなかったが午後は暑い。湿っぽく今にも降りそうな天気だ。

日曜日に町内の運動会があった。小学校が閉校になって学校行事の一環だったので人数が減ると心配された。運動会とは名ばかりで終わった後の親睦会がメインだ。
いつもだと学校施設を借りてやるのだがそうはいかない。閉校の影響で少ないと思いきやかなり多い。
代変わりで子供世代が子を連れてくる。小学校以来の顔もいてすっかり大人になった。

こう言う機会でもないと隣近所と言っても付き合いがない。いるのはわかっていても話す機会がない。
団塊の世代が多く引退して子世代が増えた。先祖代々の家屋敷を継ぐところが半分ほどある。
残り半分は高齢者世帯でいずれ空き家になるだろう。私の近所は10世帯ほどあるが同居は5世帯丁度半分だ。
独り住まいが亡くなって今年も空き家が出た。町内を少しでも盛り上げようと企画したが思ったよりも集まってこれからに期待を持てる。


職人の世界—–自分の木で建てる3

今まで伐採した現場はいくつになるだろうか。昨年だけで2箇所ほど伐っている。伐るだけで建てなかったのが多い。年中木を買うのであちこち伐る現場はある。在庫との調整もあるので無闇に買うと資金繰りで苦労する。伐り出しすると全部買い取りなので在庫も増える。

伝票を見ると2013年が一番多かった。現場もそれに応じて多く並行して進めていた。伐採の多さと現場の数は関連がある。逆に言うと山から出して建てようとする方が多く来る。それほど伐採と弊社の仕事は関連が深い。経験の数は自分の木で建てるためのノウハウもあると言うことになる。

最初に伐ったのは国産材を使い始めた18年前だった。親戚の工事があって山持ちだったので森林組合の協力で出した。それまではスプルスとか米松の輸入材が多かった。少し前に建てた自分の事務所も外材だった。プレカットはまだ出始めで少なく手刻みだった。それから間もなくプレカットが普及し始め増えていく。最初の山出しで懲りた私は2,3年国産材を敬遠していた。100_0212

15年前に古い家の隣に若夫婦の家を建てることになりすぐ近くの山の木を使うことになった。建主の祖父が手入れした山で7,80年くらいの杉があった。孫の新築に使うのであればと快諾を得て伐採した。素材の良さと価格も折り合いがつき利益も出て山から出して建てることに自信が出てきた。伐採職人と搬出、製材と連携も良くトラックも借りて自分のところで乾燥した。

それから毎年のように伐る話が舞い込んで在庫を溜めていった。建てることと無縁の現場もあったが材木の在庫を増やすことに夢中になった。乾燥材をいつでも用意できるようにと倉庫も借りて在庫した。杉だけでなく赤松や欅などの大黒柱や曲がりの材料まで揃えた。

曲がりや大黒はいつでも手に入る訳ではなかった。山全体を別業者が買って一部の欅だけを買うことも多かった。職人や森林組合などから情報を得て買い付ける。森林組合は大掛かりな伐採も多い。中には2,3本欅とか雑木が混じるとチップに売るより高く買う私に電話がきた。在庫は山出しではなく単品買いも多かった。000_0271

道路工事にかかり伐ったり住宅の周りの伐採もあった。道路工事は森林組合が受けることが多く規模も大きかった。山の中に道路が通ると銘木と言えるようなものが多く出た。住宅も周りは日当たりが良く年輪が粗くなるのが多くてよほど安いとか太くない限り買わなかった。

唐松だけで家を建てたことがあった。最初に杉の山の予定が相続で揉めて代わりの唐松を伐った。唐松は梁とか構造材として見えない部分に使われる。狂いやすくヤニも強いのでよほどの良材でないと使えない。唐松は成長が早く樹齢が50年を超えると中心から腐り始める。伐った木は50年くらいで何本か腐れがあった。

建主の意向で自分の木を使うことになった。6寸角で構造を組み仕上げもフローリングとか羽目板も作った。建具やキッチンなど家具材まで全て唐松という徹底ぶりだった。これなどは木を見てから設計を進めた例だった。狂ったりするリスクよりも唐松を使うことに意義を求めた訳だ。000_0254

経済的なメリットだけでなくこう言うこだわり方ができるのがわかった。材料をふんだんに使えてしかも金額のことは気にしなくても良い。自由にしかも完全にオリジナルの二度と作れない家が完成した。

昔の田舎の家は大工がこうやって建てていただろうと思う。伐採から製材乾燥して建てる昔の大工の調整能力と設計能力がいかに優れていたかと言うことだ。自分の木で建てるやり方を知らなければ昔の大工の凄さを半分もわからなかったと思う。

自分の木で建てる一番の意義は先祖との繋がりや思い入れだろう。次は完全にオリジナルで他では絶対作れないものができることだろう。この二つで自分の木で建てる意義は十分にあると思っている。


職人の世界—–自分の木で建てる2

ご先祖が植えた木で家を建てるのは意義のあることだ。ただし言うは易しで現実は厳しくハードルは高い。伐り出すだけの価値がない木も多い。50年生が分かれ目だが一番多い。70年生くらいになるとグッと減る。90年生クラスは良い値で取引されるが滅多に出ない。

先祖の山の木で建てたいと言うのがあって山を見に行った。墓地の隣で反対側は住宅地、樹齢は90年以上。木だけを見ればこれ以上ない物件だが倒せない。吊るし切りも考えたが量もあるので合わない。

実は良い物件は何か不利な条件があって残っている。簡単に出せればコストも安いし残っていないわけだ。別な時に谷底にあったとんでもなく太いのを見たことがある。出しにくいから価値があるのか出すのに金がかかるのか。000_0260

伐り出しできなかった銘木であろう木をたくさん見てきた。伐った現場の奥に道路もなくさらに良いものがある。奥の所有者に交渉するが建てる予定もなく出す気もないと。赤松の100年以上の見事な木で写真を見ると今でも欲しくなる。

親戚の山から出してと言うこともあった。先祖の山なのだが相続がらみで直前になって中止もあった。普段は関心がないのに伐るとなって相続で揉めたのだ。いかに山の木に関心がないかだ。

意外と多いのが住宅地の家の周りの木だ。銘木とは言えないが陽当たりが良くて太い。倒すのに吊るし伐りとか金がかかる。住宅地にあるものはただ太くて目が粗く材として見ればあまり価値がない。000_0309

逆に山の所有者が使ってくれるのを心待ちにしていた例もあった。建てたいと思った時に近くに祖父が手入れした80年くらいの杉があった。孫が建てるのに使いたいと言ったら大喜びで提供してくれた。枝打ちも下草刈りも行き届いた素晴らしい山だった。

山から出して建てるのには製材乾燥に保管場所が必要だ。丸太を一時保管する場所とか製材後の桟積みした材木を積む場所だ。森林組合とか土場に預かってくれるところもある。製材後が大事なので桟積みして晒したり倉庫へしまう。当社では設備も場所も用意できる。

これらの一連の管理を任せる業者が必要になる。山から出して製材乾燥するには家を建てる業者が一番最適だ。昔は工務店はどこでもやっていたが今は難しい。当社ではできるだけ地元材を使って建てて欲しいので推進している。000_0342

山の木を買い取る業者は昔からいる。山師とか言われる人たちだ。交渉上手でたたいて買うことが多かった。森林組合などがそれを引き継いでいるが製材や乾燥は請け負わない。製材所も丸太を買ったり製材の賃挽きはしてもらえるが伐採はしない。全部一貫して管理できるところは少ない。

以前であれば伐採、製材、乾燥と一連の仕事をやるのは大工が多かった。棟梁が建て主から依頼され木こりと製材所を連れてくる。資金繰りもあって伐ったらすぐ製材し現場で乾燥した。住宅の暖房が普及した現在では乾燥が不十分で使えない。

私が子供の頃は移動製材所が建てる場所の近くに出張してきた。ポンポンと音をたてた動力機と大きな回転する鋸がセットだ。近くの山から出してすぐ製材した。角は桟積み、板は立てかけて乾燥させる。
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一番のネックは資金繰りで建てる前に払う必要がある。伐採工賃と運賃は丸太を多く出して売るのが普通だ。製材工賃と乾燥代は多く製材し建てる業者に売る方法もある。どちらにしても予定量よりも多く出すのと良い丸太を出すことだ。

買い取った材木を次の現場で使うことになるので手刻みをする業者以外にはできない。山主から見ると自分の家以外に使われる丸太が多く出ることになる。ある程度の面積と樹齢5,60年以上が前提になる。