青森県八戸市の一級建築事務所 建築組 パックス有限会社

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瓦屋

朝は寒さが残ったが日中は暖かい。現場の雪も溶けて足場の解体と瓦の配達が届いた。大工は作業場で下屋の加工。夕方から手直しで息子と現場へ行く。せっかく作った押し入れの中間棚を撤去して欲しいと。使い手に不便があったのだろう。 
 
今日届いた瓦は三州瓦で愛知から直送できた。何箇所かあった瓦屋も一箇所だけになった。仕事が集中して景気が良いかと思えばそうでもないと。職人も減ったし営業がいたのにクビになっている。仕事量が激減したのだ。cimg5592 
 
大震災の時は瓦屋は仙台に行ったきり帰ってこなかった。あちらは瓦葺が多い。職人は仕事がありすぎて瓦メーカーが全国の職人を集めた。相当な高賃金で集めるのだが2,3年で騒ぎは収まった。で、瓦屋は元の状態に戻り人数を減らした。 
 
城のような瓦を乗せた大きな家が減って田舎では仕事がなくなった。洋瓦が少し増えても大げさな瓦を乗せた現場には追いつかない。瓦だけで小さな家を建てるのできるほどかける。工期も何ヶ月もかける。断熱も耐震もクソもない見てくれだけの家だ。 
 
隣近所との見栄の張り合いのような家は天然記念物のように激減した。瓦は仕事が大幅に減って業者数も減る。全国的に見れば主流なのだろうが当地では珍しい。もう十年にはなる付き合いだが職人が減る一方だ。そのうち廃業しないとも限らない。cimg5591 
 
瓦自体はなくなることもないだろうから業者が遠くから来るようになる。メンテナンスやアフターがどうなるか心配だ。メーカーが主導するような体制になるだろうか。何にしても古民家にはなくてはならない業者だ。仕事を増やそうにも予算的な事情が許さない。将来が心配な業者だ。


少量こだわり価格

昨日は所用で朝から出て歩く。午後から銭湯に行く、以前建てた方とバッタリ。夕方から新しくできた新聞カフェと銘打った寿司屋に行った。娘と家内の三人で行ったが寿司屋と言う雰囲気ではない。カフェと言うくらいだから和風とは大違いで馴染めない。 
 
当地では回転すしが大流行で大手がひしめき合う。平日の昼から駐車場も満員になる盛況だ。子供と行ったからかれここれ20年以上行ったことがない。回転寿しと言えば少し古くなってパサパサの寿しと言うイメージがある。近年は注文が当たり前で握りたてが食べられるようになっている。 
 
以前は地元の業者の回転すしがあった。廃業が相次ぎ1社くらいしか残っていない。サービスの質や店内デザインは大手には敵わない。肝心の寿司にしてからがマグロは中央から流れてくるから地元は不利だ。その上安いとくれば勝負ありだろう。 
 
住宅も若者を中心に大手の限りなく建て売りに近いものが大流行りだ。地元で対抗できる業者はデザインをウリにしているところのみだ。10年くらい前だったら地元志向とか健康志向があった。今はもう死語に近い。安くデザインもそこそこで大手の安心もプラスと考える層が増えた。 
 
当社としてはほぼ壊滅に近いのでこのような層は狙わない。古民家とかこだわりの一部の層が狙い目だ。それにプラスする所の築年数の経たリフォームがある。中高年層の中にはプレカットやビニールクロスに飽き足らない方がいる。 
 
若い時に建てた家は予算の都合で大壁だが子供の頃見た真壁の家に憧れがある。そこでリフォームするなら思い切って一部屋だけでも古民家にしたい。終の住処には古民家は似合うしどうせ大きな家は不要だ。一部分に思い切った予算をかけてゆったりと過ごしたい。と、こう言うのを狙って古民家リフォームができた。 
 
リフォームは大手でも工務店でも手間ヒマがかかるのは同じだ。だったら中小でも大手に対抗できる。それもこだわった古民家とか地元志向もありだ。回転すしには手間と腕で勝負する寿司屋でないと対抗できない。大量低価格には少量こどわり価格で勝負するしかない。cimg5588


外断熱

ガッチリ冷え込んで道路はアイスバーン状態。材木を積んで現場への途中で滑ってハンドルを取られる。トラックは夏の間もスタッドレスを履いていたがすり減って滑る。現場は今日からまた二人に戻ってサッシ取付が済んで外部の断熱材を貼った。とりあえずこれで外部は塞がる。 
 
先ほどもお施主様のご家族が現場へお見えになった。奥様やご家族の関心は暖かい家にして欲しいと言うことだ。断熱は古民家であっても要求される時代なのだ。ご主人はこだわった家つくりであっても家族には単なる趣味の問題かもしれない。 
 
とかく古民家風を標榜する工務店には耐震性や断熱をないがしろにする例もある。確かにこれらは相反することも多く無視したいのも山々なのだ。外部は特に難しく屋根垂木現しは和風の基本なのに断熱のためにできなくなる。今の現場は本屋がそうで垂木現しは下野部分に限られる。
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内部の真壁には断熱材を外にする必要がある。基礎はもちろん天井も外断熱になる。連続性を保つためにはグルリと外断熱になってしまう。すると屋根は垂木の外に断熱だから現し垂木ができなくなる。断熱のない下野部分は例外になる。 
 
外壁を貼る関係から壁はできるだけ薄くしたい。でないと板を貼ってササラをつける鎧張りの場合は柱から離れてしまう。となると断熱材は手に入る最高級のものになってしまう。今だとウレタンが一番性能が良い。で、ウレタンの外断熱になった。
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来週は月火と大工はよその応援に行く。借りたお返しなので断ることができない。なんだかんだと住宅が建っているのか大工が足りない。水曜には下野部分の加工と搬入があってトラックを借りる。フローリングの材料を運ぶために私は遠くまで走る。来週は足場の組み替えや瓦屋、板金屋と業者の出入りは多い。


施主の満足

朝が冷え込むわりには日中は気温が上がった。日も出て午前中はお施主様と現場で打ち合わせ。お施主様も鐵工所経営なので職人肌で納得するにも時間がかかる。些細なことでも時間をかけて納得するまで説明を聞く。内部外部のデザインとかこちらの考えを伝えて反応を見る。 
 
設計者の中にはデザイン等について施主の意向を聞かないと言うのもいる。私はできるだけ聞いてダメなものは説得することにしている。いきなりこちらの意向を通そうとしたり無視したりはしないようにしている。となると施主の反応次第で時間をかけたり強引にいったりする。 
 
所詮素人は思いつきにも限度があってまあ子供騙しみたいなことを言う。無下に反対したり無視はできない。時間をかけて説明し納得するまで諦めない。私はどちらかと言うと現場で思いつくタイプなので図面段階でできることが少ない。建ててから色々思いつくと言う困ったタイプなのだ。 
 
大工は基本的に最初の図面の通り作る。あとで変更は手間がかかることが多いから嫌う。しかし後でないとわからないこともあるのも事実だ。息子が棟梁なのは意見が通りやすいのがある。外注で現場単位取り決めだと後からの変更は追加工事になる。当たり前だがこだわった家つくりは後での方がわかりやすい。で、変更が多くなる。 
 
そしてそれを施主に説明するのだが相手も職人で簡単に納得しない。大工たちは言い合いをするこちらを呆れた眼差しで見ながら仕事をする。基本的には施主が納得するまで続くから2,3時間はすぐ経つ。今日のはエアコンの取り付け位置だった。 
    
こうやって手間がかかるのは大工だけでなく設計にも膨大な時間をかけて家を建てる。かけた時間に比例して施主の満足度が上がると言うことだ。このやり方は変える気がないから年間で建てられる棟数が限られてくる。大工も一つの現場に半年もかかりっきりだからちょうど良いのだが。cimg5503


構造材現し

朝晩は霜がおりて起きると下の犬小屋が見える。夏は少しでも音がするとワンコが起きてこちらを見る。寒くなるとさっぱり出て来る気配がない。ワンコも寒いと億劫になるのだろうか。現場も周辺が凍るようになって溶けると靴に泥がついて中を汚す。
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来週は別な組の応援で大工がいなくなる。今週中にサッシがついて外部が塞がる。瓦屋は来週から予定しているのでとりあえず雨雪のの心配はない。玄関の下屋を加工しないとならないので少し現場が遅れる。10時に金物検査があって外部の断熱材を貼れるようになった。 
 
今度の現場は屋根が現しになっている。二階天井がそのまま屋根なりに勾配になっている。材木も手間もかかるので予算次第でいつでもとはいかない。杉材で組むので野地板も含め全て杉になる。ほとんど無節なので薄いピンクが壮観で綺麗だ。 

このやり方をやったのは今度で二度目だ。やりたいのだが上りに掛ける垂木も無節の105角だし野地板も節がない。とにかく無節のオンパレードなのだ。もちろんカンナがけから刻みも組み立ても手間がかかる。その代わり普通の家では見ることのない美しい構造を見ることができる。cimg5578   
数寄屋とか和風では構造材を見せることで美しさを表現する。見せるのは材料だけでなく技術も見せることでもある。刻みからカンナがけ、込栓まで見られることを意識している。女性と同じで見られることを意識するから綺麗になる。隠すことを前提にする大壁の家では楽屋裏は見られたものではない。 
 
私はどちらかと言うと外観より内部を重視する。外観では構造材の美しさを見せる部分が少ない。特に断熱が重視されるようになり外部の真壁が不可能になった。屋根垂木も内部は現しなのに外部は塞がれている。ことほど左様に大壁の家のような作り方を前提の断熱とか耐震は和風には向かない。今できる最大の努力で下屋部分だけ構造現しになっている。