青森県八戸市の一級建築事務所 建築組 パックス有限会社

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長尺モノ

朝から製材所で修正挽き。途中歯医者に行って昼食後また製材所へ。ほぼ一日製材所のノコ近くにへばりつく。労災に違反する行為だが息子と二人でいつもやっている。回転するノコの周囲は立ち入り禁止になっている。 
 
大きく荒挽きした材木を使用寸法に落とさないとならない。この時に腐っていたり目が悪くて使えなかったりする。木は中心に近いところが節が多い。成長とともに枝は上の方に出るからだ。年数が経ち大きくなると下に枝が少なくなる。この部分が無節の良材になる。 
 
荒引きした材は皮に近い部分だから節がない。製材するにつれて中から節が出てくる。逆に中心近くまで節がなくて良材になったりもする。これはギャンブルのようなものだ。だから最後まで修正挽きに付き合いたくなるわけだ。 
 
長い材木を多用すると在庫の長尺ものが足りなくなる。長ものを山から出すと高くつくのであまり在庫をしていない。長いものを出す時は太くて節のなさそうないい丸太に限る。そもそも丸太買いは高くつく。 
 
良材をしかも長尺で取ろうとすると山から丸太で買うしかない。長尺だけを買うと値段がベラボーに高い。規格の倍以上はする。しかも良材という条件が付けばさらに高い。大梁などに長さ3間とかを使うと規格の2間ものの3倍位になる。 
 
そしてここが重要なのだが乾燥していることが条件なのだ。生の状態だと狂って曲がったり割れたりする。長尺は普通現しが多いから非常に困るわけだ。となると良材で乾燥したものしか使えないから非常に高価なものになる。 
 
古民家風とかにこだわる方は大黒も30センチ以上を望むし梁も3間とかの長尺を使いたがる。製材所でも長尺は赤松とかケヤキとか高価な木しか置いていない。住宅に使うには予算的に厳しい。しかしかなり見栄えもするので何とか在庫したりして使うようにしている。
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修正挽き

午後から台風の猛烈な雨と風。外部工事がないので現場の事は気にしなくても良い。週末にははめ板などの材料を運ぶことになった。お客様からトラックを借りたりして一度に運ぶ。岩手の加工業者に依頼することになり遠いので何往復もできない。 
 
大雨の中作業場で曲がりや大黒の修正挽きの打ち合わせ。隣の製材所で挽くので集まって打ち合わせをする。明日の午後から運んで挽くことになった。大黒や曲がりの修正挽きは製材所任せではできない。 
 
十分に乾燥した材木を少しずつ使いたい寸法に挽く。中心部に近いと普通は節が多い。腐ったりしている場合も多いので少しずつ挽いてちょうど良いところで止める。この丁度よいというのが難しい。目が悪かったりしたらがっかりである。 
 
集成材や規格の寸法だけの家つくりでは考えられない手間をかける。大工も付きっ切りで製材所に行かないとならない。ほぼ1日掛かりになる。大工にできない場合は私が代理で行くが思うような仕上がりにならない。 
 
大工には大工の都合があって良い寸法というのがある。刻みをする際にやり易い寸法がある。刻みをする棟梁でないとこの辺はわからない。微妙な感覚も必要で加工し易い寸法に挽くのが一番大事だ。明日から週末にかけ私も忙しくなる。いよいよ加工も佳境に入るので毎日が緊張の日が続く。


仕口

しつこい雨が降り続く。しばらく続いているので道路には側溝などから溢れている。明日あたりにはまた台風が来る。歯医者に寄ったり大学の支部の広告関係など午前中かかる。午後から作業場へ行く。 
 
刻みの始まった作業場では桁材を連結して刻みをする。その方が正確だし連結も金輪で繋ぐ。仕掛けは面倒だが組むと強いし狂いもほぼない。仕口は可能であればほぼ昔の通りやることにしている。栓や組み手で強度を保ち金物だけの現代風はやらない。 
 
こう言った仕口を刻める大工も減りまた面倒なので予算的にも難しい。現しで作るだけでも大変なのに仕口もややこしい。墨を付け刻む技術もやったことがない大工が増えた。腰掛け継ぎとかアリ継ぎはよくやるが金輪とかせん継ぎはあまり見かけない。 
 
宮大工たちはこう言ったややこしい知識を持っている。もちろん今でも使う現役の知識だ。現しが多い社寺は金物を使うことができない。壁で隠して補強もできない。仕口だけで強度を出すのでややこしく難しい刻みをする。 
 
住宅では大きさが違うので梁と柱の連結も簡単に差すだけだ。抜けないように栓を打つこともあまりない。逆に検査があるので金物を使う。大黒と大梁の取り合いは金物だけでは心もとない。やはりここはヤトイのサネを入れたり複雑な仕口で組むよりない。 
 
できてしまうと複雑な仕口も金物も同じ評価になる。どんなに太い大黒と大梁であっても金物は同じものを使う。検査のために貧弱に見える金物が飾りのようにつけてある。みっともないからと木で隠したりする。 
 
今回は8間14mの4本連結になる。連結した材木は一本の材木とほぼ同等の強度を持つ。折れる時は仕口の部分でなく材木が裂けて折れる。当社ではできる部分はこう言うやり方をすることにしている。手間がかかっても知識があってできる部分は全てやることにしている。長い目で見ると絶対に長持ちするからだ。
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大工道具屋

昨日までの暑さが消えて秋の気配が。作業場は今日も刻みの続き。土台が終わって胴差し廻りの墨付けに入る。二階床のことだが梁だけを残して墨を付ける。ちょうど土台と対になる感じだ。別な製材所に預けてある栗の製材ができて引き取りにいく。 
 
週休二日制になって以来土曜日はあまり電話も来ないし業者も来ない。先週は機械の調子が悪くメンテナンスをしたが請求書が届いて腰を抜かす。とは言うもののいつもこんな感じで工作機械は修理費も高い。 
 
大工道具や金物を配達してもらう業者が大工道具のメンテナンスに来た。通称道具屋と呼ばれ大工道具の販売修理とサプライ品を配達してくれる。現場や作業場へ持ってきてくれるので時間を取れない大工は助かる。ビスとか金物も配達してくれるので重宝する。急ぎも心得たもので融通が利く。
 
昔からある職人相手の商売で職種により専門がある。大工道具とか左官道具とか建具家具関係などたくさんあった。今では大工道具ぐらいしか残っていない。電動工具の普及が逆に売り上げ向上に寄与している。馬鹿にならないのが通称タマと呼ばれる釘やビス類などのサプライ品の配達だ。 
 
切れてから注文するのでその日のうちに必要になる。使う前にチェックすれば済むことだが現場に行ってから気がつく。前もって分かれば納期はかかるが安いところはいくらでもある。職人はそうした細かく値段をチェックするのが不得意だ。 
 
高いのを承知の上ですぐ来る道具屋を頼ってしまう。売った道具のメンテナンスや使い心地を聞くのも道具屋の大事な仕事だ。メーカーや問屋にフィードバックして売れる商品を揃える。わがままな注文が多いのと職人相手なので営業もベテランしかいない。 
 
道具は職人持ちだが金物は会社が持つ。金物は一つの現場で10万から20万くらいのものだ。金額は建材店には叶わないが値段の叩き合いもないし友達付き合いに近いので安定している。朝早くから遠くの現場まで呼びつけられたりするワガママに付き合いきれればの話だが。


現場のイメージ

今日は午前中から雨、時折強く降る。来週にはまた台風が来るとか。幸いなことに外の現場は今はないのでどうと言うこともない。朝から今日も作業場で大工と打ち合わせ。 
 
大工は誰でも同じで図面を渡されて初めて現場を知る。普通であれば図面を見て概略がイメージできるまでは1週間以上かかる。その頃までは細部の打ち合わせなど無理でイメージできない。だから話が通じない。 
 
まずは必要な角が何本か在庫で間に合うかそこら辺からスタートする。作業の中でどこにどのような材木が入るか分かってくる。その数すら分からない段階では細部はおろか梁材の数も出せない。 
 
こちらは設計者で半年以上も前から図面を引いているので細部まで把握できる。自分が分かるからと大工たちに伝えてもさっぱり通じない。逆にトンチンカンなことを聞いてくる。だから墨付けをする者がどこまで理解したかが打ち合わせのポイントになる。 
 
お盆前から始めてやっと昨日あたりから土台の墨付けが始まる。こちらは納まりの寸法を出して仕上げ材を発注したい。設計と元請けであるから発注は大事な仕事だ。在庫を使えるか安く手に入るかが重要なことなのだ。 
 
設計者としての顔と請負の顔は時として相反する。私はどちらかと言うと設計者としての顔が強い方だ。原価無視まではいかなくとも仕上げ第一で考える。大工への指示もそうなるから良い材料念入りな手間になる傾向がある。 
 
やらなくても良い仕上げ方を大工から聞いて端折ると不満そうな顔をする。原価を無視できない請負者としてはメリハリを付けたい。何でも理想的にやりたいのはやまやまだが落とすところも必要だ。 
 
現場を理解し始めた大工が理想のやり方に傾くのは仕方がない。しかし決められた予算の範囲で最高のものを作る義務があるこちらはつい言い合いになることがある。棟梁が息子であるのは他人よりも激しくなることもある。
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