青森県八戸市の一級建築事務所 建築組 パックス有限会社

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大工道具屋

昨日までの暑さが消えて秋の気配が。作業場は今日も刻みの続き。土台が終わって胴差し廻りの墨付けに入る。二階床のことだが梁だけを残して墨を付ける。ちょうど土台と対になる感じだ。別な製材所に預けてある栗の製材ができて引き取りにいく。 
 
週休二日制になって以来土曜日はあまり電話も来ないし業者も来ない。先週は機械の調子が悪くメンテナンスをしたが請求書が届いて腰を抜かす。とは言うもののいつもこんな感じで工作機械は修理費も高い。 
 
大工道具や金物を配達してもらう業者が大工道具のメンテナンスに来た。通称道具屋と呼ばれ大工道具の販売修理とサプライ品を配達してくれる。現場や作業場へ持ってきてくれるので時間を取れない大工は助かる。ビスとか金物も配達してくれるので重宝する。急ぎも心得たもので融通が利く。
 
昔からある職人相手の商売で職種により専門がある。大工道具とか左官道具とか建具家具関係などたくさんあった。今では大工道具ぐらいしか残っていない。電動工具の普及が逆に売り上げ向上に寄与している。馬鹿にならないのが通称タマと呼ばれる釘やビス類などのサプライ品の配達だ。 
 
切れてから注文するのでその日のうちに必要になる。使う前にチェックすれば済むことだが現場に行ってから気がつく。前もって分かれば納期はかかるが安いところはいくらでもある。職人はそうした細かく値段をチェックするのが不得意だ。 
 
高いのを承知の上ですぐ来る道具屋を頼ってしまう。売った道具のメンテナンスや使い心地を聞くのも道具屋の大事な仕事だ。メーカーや問屋にフィードバックして売れる商品を揃える。わがままな注文が多いのと職人相手なので営業もベテランしかいない。 
 
道具は職人持ちだが金物は会社が持つ。金物は一つの現場で10万から20万くらいのものだ。金額は建材店には叶わないが値段の叩き合いもないし友達付き合いに近いので安定している。朝早くから遠くの現場まで呼びつけられたりするワガママに付き合いきれればの話だが。


現場のイメージ

今日は午前中から雨、時折強く降る。来週にはまた台風が来るとか。幸いなことに外の現場は今はないのでどうと言うこともない。朝から今日も作業場で大工と打ち合わせ。 
 
大工は誰でも同じで図面を渡されて初めて現場を知る。普通であれば図面を見て概略がイメージできるまでは1週間以上かかる。その頃までは細部の打ち合わせなど無理でイメージできない。だから話が通じない。 
 
まずは必要な角が何本か在庫で間に合うかそこら辺からスタートする。作業の中でどこにどのような材木が入るか分かってくる。その数すら分からない段階では細部はおろか梁材の数も出せない。 
 
こちらは設計者で半年以上も前から図面を引いているので細部まで把握できる。自分が分かるからと大工たちに伝えてもさっぱり通じない。逆にトンチンカンなことを聞いてくる。だから墨付けをする者がどこまで理解したかが打ち合わせのポイントになる。 
 
お盆前から始めてやっと昨日あたりから土台の墨付けが始まる。こちらは納まりの寸法を出して仕上げ材を発注したい。設計と元請けであるから発注は大事な仕事だ。在庫を使えるか安く手に入るかが重要なことなのだ。 
 
設計者としての顔と請負の顔は時として相反する。私はどちらかと言うと設計者としての顔が強い方だ。原価無視まではいかなくとも仕上げ第一で考える。大工への指示もそうなるから良い材料念入りな手間になる傾向がある。 
 
やらなくても良い仕上げ方を大工から聞いて端折ると不満そうな顔をする。原価を無視できない請負者としてはメリハリを付けたい。何でも理想的にやりたいのはやまやまだが落とすところも必要だ。 
 
現場を理解し始めた大工が理想のやり方に傾くのは仕方がない。しかし決められた予算の範囲で最高のものを作る義務があるこちらはつい言い合いになることがある。棟梁が息子であるのは他人よりも激しくなることもある。
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登り梁

昨日に続き大工たちと拾い出し。午前中にはお施主様も作業場にお見えになった。加工中の様子とか材木の感じを見たいと言うことだ。木が好きな方はたまにいらっしゃるが曲がりや大梁くらいのものだ。今度の方は普通の材木とかフローリングの材まで見たがる。それだけ熱意があると言うことだ。 
 
今度の現場は二階天井が屋根なり勾配になる。だから登りの梁がかかる。普通は屋根垂木が尺五寸ピッチで登りにかかる。これを3.5寸角でかけて野地板を見せる。昔の家は天井がないのが多かった。現代は水平に天井があるのが当たり前だ。 
 
二階はすべて水平天井でなく上り勾配の野地現しの勾配天井にになる。かなり印象が昔の家のようになる。作ること自体は難しくないが材料や手間がかかる。すべて現しと言うことは仕上なければならないからだ。 
 
暖房の関係で吹き抜けが大きくなって三角になる。そこに熱が溜まる傾向がある。それをどうやって処理するかだがファンをつけるのが一般的だ。煙出しとかつけると抜く時は有効だが寒くなる。もう一つは上が暗くなりがちで明かりが欲しくなる。 
 
今回は煙出はつけないで壁からの明かりでカバーする。開口を大きく取り上はあえて暗くする。熱はファンでカバーする。換気とか熱の問題は現代の住宅である以上無視する訳にはいかない。問題点はなくはないのだが。


拾い出し

昨日も一日材木の選定と入れ替え。大工たちは構造材の私はフローリングとか仕上げ材の選定。加工業者が下見に来て搬入と時期を決める。トラックを借りて持ち込みしないとならない。持ち込みが基本だからだ。 
 
フローリングは11月にならないと現場搬入はない。構造材は10月の上棟までに完成させる。まずは基本的な4寸角と5寸角を拾い出しをして曲がり捻れをプレーナーを通して取る。当社はほとんど現しになるので露出する面を見ないとならない。 
 
材木は一等材、一無、二無のヤクモノに分ける。一等材は通称並角と言い節が多い。一無二無は一面無節、二面無節のことだ。今回は製材所から購入するものもある。価格はヤクモノは並角の2倍はする。 
 
節の有無だけでなく目が真っ直ぐでないとヤクモノとは言えない。丸太から製材するのだから目が斜めになったりする。こう言うのは建ててから曲がる確率が高い。だからと言って皆はじいてしまうと製材所は商売にならない。多少は大目に見るのが普通だ。 
 
大工たちは刻む際に曲がる方向を見て壁になる面に向ける。逆だと押さえるものがないので曲がってしまう。材木の選定はある意味一番重要と言える。真剣に何度も一本ずつ転がしながら見る。 
 
拾い出した材木は大きく挽いて乾燥してあるので寸法が大きい。曲がりを修正しながら一定の寸法に鉋掛けして削る。上下の小口には使う場所とか現しの面の方向が書いてある。昔は竹でできた墨さしだったが今はマジックで書く。間違って濡らしてもにじまない。 
 
ここまできてやっと墨付けの準備完了となる。拾い出しの段階である程度仕上がりのイメージができてしまう。特に大黒や曲がりが入るとこれでほぼ構造は決まる。普通は棟梁が相方と二人でじっくり時間をかけてやる。
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手刻みの家

今日も作業場で加工、選定。機械が故障して急ぎ修理をする。何ヶ月か使用しない期間があって調子がでない。新たに仕入れした分も含め現場分は揃った。製材所から仕入れた分は乾燥していて無節の約物揃いですばらしい。 

減りつつある製材所だが集中化もあってそれなりに忙しい。丸太も山のように積んであるし在庫もたまっている。賃挽きが主だが自社分の丸太も仕入れしている。少ないとは言え在庫も揃っている。 
 
良い丸太を仕入れして乾燥在庫するのが基本なのだが資金繰りは厳しい。大黒や曲がりは矢無を得ないとしても杉などは在庫したくない。乾燥材がないから仕方なく在庫したが製材所の販売が調子よくない。売れないってことだ。 
 
手刻みの減少で無垢の材木が売れなくなった。宮大工とか一部の和風住宅くらいしか手刻みをしない。一般的に手刻みは無節の良材を使う現場が主だ。となると丸太買いをするにも高い丸太を仕入れないとならない。 
 
20年前に比べると丸太もだいぶ下がった。それでも丸太代と賃挽き工賃にさらに乾燥する必要がある。資金負担はそれなりかかる。製材所は仕事確保のために丸太と挽いた材木の置き場を提供する。つまりただで貸すってことだ。 
 
もちろんそれに甘えていると在庫管理が疎かになり紛失する。丸太や材木は印を付けないと誰のモノか分からなくなる。スプレーなどで色を付けたりするが製材所も動かしたりするので分からなくなる。嫌なら自分の倉庫に仕舞えと言うことだが狭いのであまり置けない。 
 
ナンダカンだと苦労する手刻みだが完成した家を施主が喜ぶのを見るとまたやりたくなる。少なくともプレカットではあり得ない家作りであることは確かだ。